■整数の拡大と素因数分解の一意性(その16)
pk+1型素数はガウス素数・アイゼンシュタイン素数の拡張物の積に分解できるのではないか?
という予想に到達する。本当だろうか?
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a0,a1,・・・,ap-2を整数
ζ=exp(2πi/p),pは奇素数とするとき
a0+a1ζ+a1ζ^2+・・・+ap-2ζ^p-2
の形の複素数を円分整数Z[ζ]といい、Z[ζ]を含む最小の体を円分体Q[ζ]という。
ap-1ζ^p-1が入っていないのは
ζ^p-1=-(1+ζ+ζ^2+・・・+ζ^p-2)と書けることから、ζ^p-1は消去可能で、結果的に同じ集合が得られることになるからである。
一意性が成り立つためにはap-1ζ^p-1が入っていないほうが都合がよいのである。
Z[i]やZ[ω]のように、素因数分解の一意性が成り立てばフェルマー予想の証明に活用できることから、さらに都合はよいのであるが、そうは問屋が卸さなかった
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クンマーは、p=5,7,11,13,17,19の場合にpk+1型素数について、それをノルムとする円分整数が存在することを確かめた。
しかし、p=23に反例があったのである。ノルムが47、139,277,461,967,・・・となる円分整数が存在しないのである。
Z(ζ)が素因数分解の一意性をもたないpが存在することがわかって、フェルマー予想に決着をつけることは困難になってしまったのである。
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【4】クンマーの定理
それでもクンマーは諦めずに前進して、クンマーの定理「pが正則素数ならばフェルマー予想は正しい」のである。
最初のブレークスルーは1851年,クンマーによってなされました.クンマーは円分体の整数論の研究に専念し,正則素数であるすべてのnに対してフェルマー予想が成立することを示したのです.正則素数pはBp-3 までのベルヌーイ数B1,B2,・・・,Bp-3 の分子を割り切ることのできない素数として定義されていて,100以下の非正則素数は37,59,67ですべてですから,この3つの数以外では100までのnに対してフェルマー予想が正しいことが証明されたことになります.
クンマーの定理
フェルマー方程式x^p+y^p=z^pが非自明解をもつためには,
Bk=0 (mod p)
0<k<1/2(p−3),B1=0,・・・,Bp-3=0
[補]ベルヌーイ数の分子の素因数分解は,正則素数の議論に用いられる.奇素数pがベルヌーイ数B1,B2,・・・,Bp-3の分子のいずれをも割り切らないとき「正則素数」,いずれかを割り切るとき「非正則素数」という.100以下の非正則素数は37,59,67(1850年)であるが,1874年には101,103,131,149,159の非正則性も示された.
n Bnの分子 素因数分解
0 1
1 1
2 1
4 1
6 1
8 1
10 5 素数
12 691 素数
14 7 素数
16 3617 素数
18 43867 素数
20 1746113 =283・617
22 8545513 =11・131・593
24 236364091 =103・224797
26 85531033 =13・657931
28 23749461029 =7・9349・362903
30 8615841276005=5・1721・1001259811
32 37・683・305065927
[1]B22の分子は,p=131を素因数にもつ.
[2]B24の分子は,p=103を素因数にもつ.
[3]B32の分子は,p=37を素因数にもつ.
[4]B44の分子は,p=59を素因数にもつ.
[5]B58の分子は,p=67を素因数にもつ.
x以下の非正則素数の数をI(x)と記すと
I(x)/π(x)〜1-exp(-1/2)=0.39346・・・
正則素数の密度はexp(-1/2).イェンゼンは非正則素数が無限個あることを証明した.一方,正則素数が無限個あることはいまだ証明されていない.
マッキントッシュはベルヌーイ数Bp-3の分子を割り切る素数はウォルステンホルム素数であることを示した.ウォルステンホルム素数でいまのところ既知のものは16843と2124679だけで,p=16843,2124679はBp-3の分子を割り切るのである.
クンマーの定理により,新たに
x^11+y^11=z^11
x^13+y^13=z^13
・・・・・・・・・・
の場合の解の非存在がわかったわけですが,たとえば,691の場合,
x^691+y^691=z^691
に自然数解のないことはクンマーの定理からは証明できません.691は非正則素数691であり,ζ(12)/π^12の分子が691で割り切れるからです.
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