■整数の拡大と素因数分解の一意性(その14)

【3】ガウスの整数環(1)

ガウスの整数

Z[i]={m+ni|m,nは整数}

には,±1,±iの4個の単数があります.ガウス整数は正方形の対称性をもつ正方格子をなします.単数を除いて,素因数分解の一意性が成立します.4k+3型素数はZにおいても素数ですが,2と4k+1型の素数はZで因数分解できます.4で割って1余る素数は,複素数(ガウスの整数環)に範囲を広げると素数であり続けることはできず,分解されてしまうのです.

  2=(1+i)(1−i)=i(1−i)^2

  5=(2+i)(2−i)

  13=(2+3i)(2−3i)

  17=(4+i)(4−i)

29=(5+2i)(5−2i)

2および4k+1型素数はガウス素数の積に分解されます.4k+1型の素数は

  p=a^2+b^2=(a+bi)(a−bi)

と分解されるので素数ではなくなるというわけです.

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【1】アイゼンシュタインの整数環(1)

アイゼンスタインの整数

Z[ω]={m+nω|m,nは整数},ω=(−1+√−3)/2

には,6つの単数

  ±1,±ω,±ω^2

があり,正六角形の対称性をもつ三角格子をなします.単数を除いて,素因数分解の一意性が成立します.

2と6k+5型素数はZ[ω]においても素数ですが,3と6k+1型の素数はZで因数分解できます.

  3=(1−ω)(1−ω^2)=(1+ω)(1−ω)^2=(1−ω)(2+ω)

  7=(2−ω)(2−ω^2)

  13=(3−ω)(3−ω^2)

  19=(3−2ω)(3−2ω^2)

37=(4−3ω)(4−3ω^2)=(4−3ω)(7+3ω)

  1729=7・13・19

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これらのことからpk+1型素数はガウス素数・アイゼンシュタイン素数の拡張物の積に分解できるのではないか?

という予想に到達する。本当だろうか?

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a0,a1,・・・,ap-2を整数

ζ=exp(2πi/p),pは奇素数とするとき

a0+a1ζ+a1ζ^2+・・・+ap-2ζ^p-2

の形の複素数を円分整数Z[ζ]といい、Z[ζ]を含む最小の体を円分体Q[ζ]という。

ap-1ζ^p-1が入っていないのは

ζ^p-1=-(1+ζ+ζ^2+・・・+ζ^p-2)と書けることから、ζ^p-1は消去可能で、結果的に同じ集合が得られることになるからである。

一意性が成り立つためにはap-1ζ^p-1が入っていないほうが都合がよいのである。

Z[i]やZ[ω]のように、素因数分解の一意性が成り立てばフェルマー予想の証明に活用できることから、さらに都合はよいのであるが、そうは問屋が卸さなかった

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