■整数の拡大と素因数分解の一意性(その10)

【2】アイゼンシュタインの整数環(2)

[1]3次以上の多項式(不定方程式)には一般的な公式がなく,むしろ偶然の関係がものをいうようです.x^3+y^3については虚3乗根ωを使って,

  x^3+y^3=(x+y)(x+ωy)(x+ω^2y)

と因数分解できます.

[2]ところが,7,13,19はいずれもアイゼンシュタインの整数Z[ω]の体系の中では素数ではなく,

  7=(3+ω)(3+ω^2)

  13=(4+ω)(4+ω^2)

  17=(5+2ω)(5+2ω^2)

などと素因数分解されます.

[3]この組み合わせが多数生じるので,簡単にx,yを定める方程式を書き下せません(もちろん組み合わせは有限個ですから,全部の可能性を根気強く調べれば解を得ることは可能です).

[4]この場合は偶然,

  7・13=91=4^3+3^3

  7・19=133=5^3+2^3

  13・19=247は正の整数の3乗の和にならない

といった関係もありますし,結果的に

  (12+ω)(12+ω^2)=133=7・19

  (10+9ω)(10+9ω^2)=91=7・13

が成立しています.そして(±ω,±ω^2など単数を調整する必要がありますが)

  12+1=13

  12+ω=(5+2ω)(3+ω^2)

  12+ω^2=(5+2ω^2)(3+ω)→x=12,y=1

  10+9=19

  10+9ω=(−ω^2)(4+ω)(3+ω^2)

  10+9ω^2=(−ω)(4+ω^2)(3+ω)→x=12,y=1

  12+ω^2=(5+2ω^2)(3+ω)→x=12,y=1

が得られます.

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