■ロータリーエンジンはこれから何処へ向かうのか?(その6)
ところで,弦の振動や波を三角関数の級数で解くならまだしもわかりますが,熱伝導を三角級数で解くという着想は奇妙奇天烈に感じられます.これに対する回答ですが,次のように考えてみましょう.
(1)フーリエ級数では,データを一定間隔ごとにサンプリングすると,三角関数のもつ直交基底の性質:
Σcos(kx)=0,Σsin(kx)=0,
Σcos(ix)cos(jx)=0,Σcos2(kx)=n/2,
Σsin(ix)sin(jx)=0,Σsin2(kx)=n/2,
Σsin(ix)cos(jx)=0
から非対角要素はすべて0になり,連立方程式を解くことなしにフーリエ係数を簡単に求めることができる
(2)滑らかでない関数も表現可能になる
(3)フーリエ級数は周期関数にしか適用できないが,非周期関数を周期が∞の周期関数とみなすと,非周期関数にも適用できるようになる
(4)周期関数のうちで微積分がもっとも簡単なのは三角関数であり,微分方程式を解くためには,関数を三角関数の和として表せばよい
など,フーリエ級数への展開はテイラー級数への展開よりもはるかに強力な方法になっています.したがって,フーリエはべき級数の方法によって関数を取り扱うよりも,三角級数による任意の関数表現のほうが,これらのメリットを活かせると考えたに違いありません.
ここで述べたフーリエ級数は離散世界(Σの世界)のものでしたが,未知の係数を計算するために連続世界(∫dxの世界)に拡張したものがフーリエ変換(FT)です.もちろんこれらのよい性質はFTにも遺伝し,関数f(x)のフーリエ係数は
ak=2∫f(x)coskxdx,bk=2∫f(x)sinkxdx
で与えられます.さらに,FFTは位相補正によって未知の係数を効率よく計算する技法であり,そして,これらが原動力となって,現代解析学が生まれたのです.
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