■空間の因数分解(その6)

投影図を用いてステップ数を数え上げる

次元が高くなるにつれてワイソフ多胞体のワイヤーフレーム投影図は線分が密集混雑し、6-7次元ともなるとブラックアウトしてしまうことも少なくない。このような投影図を用いてステップ数を数え上げることは困難であるが、適切に着色・隠線処理を施して、適切な方向からのソリッド投影図が得られれば、それを用いてステップ数を数え上げることが可能となる。

ここで取り上げるワイソフ多様体は各頂点の座標がすべて整数値(0,1,2,・・・,n-1)をとる格子多胞体{3,4}(1,1,0),{3,3,4}(1,1,1,0),{3.3.3.4}(1,1,1,1,0),{3,3,3,3,4}(1,1,1,1,1,0)である。格子多面体のステップ数の上限は前述した{3,4}(1,1,1),{3,3,4}(1,1,1,1),{3.3.3.4}(1,1,1,1,1),

{3,3,3,3,4}(1,1,1,1,1,1)のそれぞれ9,16,25,36で上から抑えることができる。また、{3,4}(1,1,0)と{3,3}(1,1,1)は同一の多面体(切頂八面体)であり、そのステップ数は6であることがわかっているものとして数え上げを行ってみたい。

{3,3,4}(1,1,1,0)の原正多胞体{3,3,4}の頂点には切頂八面体{3,4}(1,1,0)(青)が構成される。同様に、稜には立方体{4}(1,0)×{}(1)(水色)、面には{}(0)×{3}(1,1)が構成されるが、これは2次元に退化しているため、描かれていない。そして原正多胞体のファセットには切頂八面体{3,3}(1,1,1)(赤)が残る。これを投影すると、横向きのファセットは扁平化し、ついには1本の線分として映る。これは3次元の多面体を3次元空間内で回転しながら2次元平面上に投影すると、面は次第に扁平になって、ついには1本の線分として映ること同様の現象であって、ワイソフ多胞体を投影すると、横向きのファセットは扁平化し、ついには1本の線分として映るのである。

原正多胞体である{3,3,4}のステップ数は2であるから、扁平化した切頂八面体{3,4}(1,1,0)をスタートして、扁平化していない切頂八面体{3,4}(1,1,0)を経由して、扁平化した切頂八面体{3,4}(1,1,0)まで至る経路をとることにする。この経路は当該図から直接数えることができて、ステップ数は6である。さらに、目的地の扁平化した切頂八面体内を対蹠点まで移動するための6ステップが加わり、{3,3,4}(1,1,1,0)全体では合計12ステップ必要となる。

{3.3.3.4}(1,1,1,1,0)については8(直接数え上げ)+12({3.3.4}(1,1,1,0)のステップ数)=20ステップ

{3,3,3,3,4}(1,1,1,1,1,0)については10(直接数え上げ)+20({3,3,3,4}(1,1,1,1,0)のステップ数)=30ステップ。かくして、再帰的な関係よりn次元の格子多胞体のステップ数はn(n-1)ステップになる。

最後に、{3,3,5}(1,1,1,1),{3,4,3}(1,1,1,1),{3,3,3,3,4}(1,1,1,1,1,1), ,{3,3,3,3,3}(1,1,1,1,1,1)の投影図を掲げるので、読者自ら以下の事項について確認されたい。

{3,3,5}(1,1,1,1)については、45(直接数え上げ)+15({3,5}(1,1,1)のステップ数)=60

{3,4,3}(1,1,1,1)については、15(直接数え上げ)+9({4,3}(1,1,1)のステップ数)=24

{3,3,3,3,4}(1,1,1,1,1,1)については, 11(直接数え上げ)+25({3,3,3,4}(1,1,1,1,1)のステップ数)=36

{3,3,3,3,3}(1,1,1,1,1,1)については、6(直接数え上げ)+15({3,3,3,3}(1,1,1,1,1)のステップ数)=21

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