■空間の因数分解(その1)
もうずいぶん前のことになるが、化学者の細矢治夫先生がある講演の中で「群論というのは空間を丸ごと因数分解することである」という銘言をおっしゃられたことがある。細矢治夫先生は化学のみならず数学にも造詣が深く、多数の数学論文や書籍を上梓されておられる。
銘言のごとく、空間の対称性はポアンカレ多項式の因数分解の中に集約されているといえる。
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問題の設定
3次元のプラトン立体・アルキメデス立体の相対する頂点同士を何本の辺で結べるか、そのステップ数を実際に数えてみると、
正四面体{3,3}(1,0,0) [1]
正八面体{3,3}(0,1,0) 2
正四面体{3,3}(0,0,1) [1]
切頂四面体{3,3}(1,1,0) [3]
立方八面体{3,3}(1,0,1) 3
切頂四面体{3,3}(0,1,1) [3]
切頂八面体{3,3}(1,1,1) 6
正八面体{3,4}(1,0,0) 2
立方八面体{3,4}(0,1,0) 3
立方体{3,4}(0,0,1) 3
切頂八面体{3,4}(1,1,0) 6
小菱形立方八面体{3,4}(1,0,1) 5
切頂立方体{3,4}(0,1,1) 6
大菱形立方八面体{3,4}(1,1,1) 9
正20面体{3,5}(1,0,0) 3
20・12面体{3,5}(0,1,0) 5
正12面体{3,5}(0,0,1) 5
切頂20面体{3,5}(1,1,0) 9
小菱形20・12面体{3,5}(1,0,1) 8
切頂12面体{3,5}(0,1,1) 10
大菱形20・12面体{3,5}(1,1,1) 15
となる。{p1,p2}(q0,q1,q2)は3次元のプラトン立体・アルキメデス立体のシュレーフリ・ワイソフ記号(後述)、[・]は点対称な図形ではなく、対蹠点が存在しない場合である。
本稿では、4次元以上のワイソフ多胞体(後述)の相対する頂点同士を何本の辺で結べるか、そのステップ数を求める問題を考える。(点対称な図形ではない場合、対蹠点は存在しないが、そのような多胞体に関しては最低何本の辺を経由することによって、すべての頂点に到達可能かという問題となる。)
切断操作パラメータ(後述)がq=(1,1,1,・・・,1)となる特別なワイソフ多胞体に対しては、原正多胞体{p1,p2,・・・,pn-1}の対称超平面の個数を求めることによってステップ数を得ることができるが、一般のワイソフ多胞体まで考えるとすると、対称性の議論だけでは不十分であって、何か別の一般的な手法が必要となる。
そこで、最初にq=(1,1,1,・・・,1)の特別なワイソフ多胞体を取り上げ、円分方程式・チェビシェフ多項式との関連について述べる。次いでAn,Bn,F4,H3,H4群に属する一般のワイソフ多胞体の投影図を用いて、個別にステップ数を数え上げる方法について紹介したい。
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