■形の科学会レポート(その5)

「形の科学会」では質問やコメントの類も記録に残すことになっている。

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佐藤→北岡

昨日のご発表の中で、肺水腫と肺胞炎の写真拝見しました。

両者はDiscreteに分離できる、したがって肺胞サーファクタントが有効であるという教義のようでしたが、

病理像に関して二分法で分離できるものはほぼありません。(千場先生の樹状図はそれを示していると思います)

肺胞血管からフィブリノーゲンのような大分子が漏出して肺胞内でフィブリンになるわけですから、

水分子のような低分子は必然的に肺胞内に漏れ出ます。たまたま水腫成分のない写真を撮ることは可能ですが、どちらかといえばartifactの類です。

イレッサが登場した直後に間質性肺炎が報告された有名な顕微鏡写真があるのですが、それでは両者の中間像をとっています。

当院はがんの専門病院ですが、旧来型の抗がん剤は重篤な肺線維症をしばしば惹起していたのですが、分子標的薬では以前ほど重篤な症例は経験しなくなりました。

必要であれば、そのような写真を探して添付することは可能ですので、お申し付けくださればと思います。

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北岡→佐藤

先生のご指摘のように、肺胞腔内への水分の漏出は、01ではなく連続的に変化しうると思います。

呼吸器関連の研究会では昨日のような説明はしないのですが、専門外の参加者に理解していただきやすいように、極端な表現をしてしまいました。なお、ARDSで肺水腫が強調されるのは、ICUにおける濃厚治療の影響で、本来の肺水腫の変化が加わったのが原因のひとつではないか、と推測しています。

今年9月に開催されたオンライン呼吸器学会で岡輝義先生が病理の教育講演をされましたが、はじめて、間質性肺炎の本質は肺胞虚脱だと説明されていました(抄録には記載されていませんが)。COVID-19肺炎を契機に呼吸器疾患の認識が大きく変わりつつあるのを感じています。

拙文がエムスリーに掲載されています(臨床ニュース | m3.com)。学会批判なので排除されるかもと心配でしたが、か細いコネと編集者の度量のおかげで掲載にこぎつけました。多くの方々に読んでいただいているようです。

どのような内容でも結構ですので、コメントをお寄せいただければ幸いです。

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