■最短距離に関する問題(その6)

【4】長方形ビリヤードの最短経路

 長方形のビリヤード台を考えます.ある位置からある角度でビリヤードの球を発射させると,何回か壁にあたった後,最初と同じ位置・同じ角度で戻ってくる場合があります.n回壁にあった後,同じ状態に戻る場合をn周期軌道と呼ぶことにすると,与えられたnに対して発射角度を求めるというのはおなじみのビリヤード問題です.

(Q)東西南北の4壁にぶつかって戻る経路のうち最短となるものを求めよ.

(A)この問題に対する基本的な考え方は,球を反射させる代わりに,ビリヤード台の鏡像を枠の外に作ってやるというものである.すなわち,軌道自体を折り曲げる代わりに衝突するたびに衝突した辺を軸にビリヤード台自身をひっくり返すのである.

 このような図形を鏡像群と呼べば,鏡像群を貫く直線がビリヤード球の軌跡に対応します.そして,この表示法のもとで長方形の互いに向かい合う辺同士をを同一視するとトーラスが得られますから,トーラスの中で長方形ビリヤードの軌道は単純な直線運動で表されることになります.

 長方形ビリヤードの周期性について考えると,長方形ビリヤードが周期的となるための条件は軌道方向(tanθ)が有理数であることである(ビリヤード台の縦横比あるいはそれぞれの長さは無理数でもかなわない).軌道方向が無理数の場合,軌道は非周期的となり軌道が領域を埋めつくす.それに対し,周期軌道では軌道が領域を埋めつくすことはない.周期軌道は無数に考えられるが,非周期軌道は周期軌道より圧倒的に多数を占めるのである.

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