■サッカーボール定理(その4)

2006年にドイツで行われたサッカー・ワールドカップの準備期間に,ある球の製造元が世界一球に近いボール「チームガイスト」ができたと発表した.世界一対称なボールはシンメトリーな形をした革を1種類だけ使って縫い合わせて作られているという.

 1930年に開かれた第1回ワールドカップのでは12枚の長四角の革を6組に分けて立方体(位相幾何学的12面体)のように配置されていた.すなわち,初期のサッカーボールはバレーボール型であったが,1930年代にはもう一つ,立方体をもとにして,H型の革を6枚巧みに組み合わせたボールも使われていた.

 1970年のメキシコ大会から切頂20面体型のデザインが変わった.これは20枚の正六角形と12枚の正五角形からなるが,シンメトリーな形をした革を1種類だけ使ったものではない.当該のボールはどのようなデザインになっているのだろうか?

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[1]ボールの縫い目

 テニスや野球のボールは同じ形,同じ大きさの2枚を縫い合わせてできている.この曲線は立方体各面の内接円の円弧をハミルトン閉路に沿って滑らかにつないだものである.これをひょうたん継ぎ型と呼ぶことにする.

 正多面体は立方体の他にも4種類あり,いずれもハミルトン閉路をもつ.とくに,正八面体と正二十面体には異なるハミルトン閉路を複数個ある.これらからも球面を等面積に2分割する球面上の滑らかな曲線が得られる.これらもボールの縫い目の候補となり得るのである.

 答えをいうと,世界一丸いサッカーボールは14枚の曲がった革からなるひょうたん継ぎ型であって,切頂八面体(14面体)をもとにした構造をしている.

 今後のワールドカップでは,ねじれ12面体(92面体)などが新しいさらに風変わりなサッカーボールの候補になりうると思われるが,いかがであろうか?

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・・・と2013年のコラムに書いたのであるが、この予想は大きく外れてしまったようだ。

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