■ハサミムシの翅(その1)
昆虫の翅の折り畳みは一般にコンパクトなものですが、最もコンパクトなのがハサミムシの翅だそうで、その折り畳みの仕組みを解明したという記事です。
九州大学の研究者・斎藤一哉先生によるですが、質問形式の記事は長いので、一部を端折った記事(FNNプライムオンライン編集部)と原著論文
Earwing fan designing: Biomimetic and evolutionar biology applications
PNAS, 30, 17622-17626, 2020
を紹介しておきます。時間のある時に、息抜きに閲覧頂ければと思います。
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【1】昆虫最小に折り畳める「ハサミムシの翅」の仕組みを解明…その秘密は“折り紙”だった
地球上にはたくさんの生き物がいるが、その詳しい生態やメカニズムが分かっていないことも多い。
そのような中で、九州大学大学院芸術工学研究院の斉藤一哉講師が、オックスフォード大学自然史博物館の研究者らと共に、ハサミムシの翅(はね)の仕組みを解明し発表した。
研究では、X線による解析や日本の折り紙における幾何学を応用し、ハサミムシの複な折り畳みパターンが、実は極めてシンプルな幾何学的なルールで作図できることが分かったという。
初歩的な幾何学の知識で作図も可能だそうで、定規とコンパスでハサミムシ扇子を作図する動画を九州大学のYouTube(提供:斉藤一哉講師(九州大学))で公開している。
ハサミムシがハサミ(尾角)を使って身を守るためには、胴体を柔軟に曲げる必要がありますが、カブトムシやテントウムシのように固い鞘翅(しょうし)が胴体を全部覆ってしまう構造では不可能な動きです。
ハサミムシは翅が背中の一部分にコンパクトに収納されているため、胴体を自由に動かし、ハサミを使うことができます。この柔軟な体は、狭いところに潜り込んだり、土に穴を掘ったりするときにも役に立ちます。
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【2】解明されたハサミムシの翅の仕組みとは?
我々の使っている扇子はコンパクトに閉じることはできますが、フレームの長さより短くは収納することができません。
ハサミムシの翅も、扇子の様な放射状の折線になっていますが、フレームの中心に特殊なちょうつがい構造があり、扇子を閉じた後、真ん中からもう一度折ることで非常にコンパクトに折り畳むことができます。
我々が使う扇子の要は「点」で、すべてのフレームが1点で交わりますが、ハサミムシの扇子の要は「円」になっていて、円周に沿ってフレームの根元が分散して配置されています。
この「円」を使って折り線を設計することで、要を中心にフレームが放射状に広がる扇子の動きと、長さを半分に折り畳む動きの両方を同時に実現する折り線を設計できることがわかりました。
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