■力の統一・物質の統一(その6)
【1】ゲージ理論と大統一理論
物理の世界では,空間の構造の対称性を表すのにリー群がよく使われます.リー群は様々な現象の対称性を記述するための道具といっても差し支えないのですが,現在,リー群・リー代数は,素粒子物理学のゲージ理論,大統一理論において根本的な役割を果たしています.
強い相互作用がSU(3)リー代数と関係づけられ,ユニタリー群の表現論が素粒子の対称性に用いられるようになった1959年以来,物理学者たちはより高い対称性の群を追求し始め,現在ではクォークの基本的運動状態をゲージ理論と呼ばれる理論で記述できるまでになりました.
そして,粒子の対称性を表すSU(n)のようなリー群と統合させて,ヤン・ミルズ場の理論が提唱されたのですが,電磁場はとくに一番簡単なSU(1)すなわち絶対値1の複素数exp(iθ)全体からなる乗法群の場合に相当します.また,SU(5)はSU(3)とU(1)×SU(3)を含む最小の単純群であることから,すべての素粒子の相互作用はSU(5)にぴったりあてはまることもわかってきました.
こうして,強い相互作用,弱い相互作用,電磁相互作用がひとつのリー代数に関係づけられ,大統一理論(GUT)としてまとめあげられています.現在の課題はなぜこのような性質のクォークがあるのか,その答えを求めるとともに,重力まで含めた統一的な世界像を模索している段階にあるのです.
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