■リンク機構(その4)
【7】コペルニクスの定理
(Q)固定された円の内部に直径が1/2のもう一つの円が入っているとする.小さい円が大きい円に内接し滑ることなく大きい円に沿って回転すると,動円上の定点はどのような軌跡を描くか?
(A)答えは驚くほど単純で「固定円の直径」上を往復で直線運動するのです.この結果は円周角の定理より正しいことが確かめられます.コペルニクスの定理と呼ばれているのですが,運動学的には回転運動を直線運動に変換する変換器であり,リンク機構(蝶番つき平行四辺形)を使って実現されます.
(Q)固定された円の内部に直径が1/2のもう一つの円が入っているとする.小さい円が大きい円に内接し滑ることなく大きい円に沿って回転すると,動円の直径によって覆われる点集合はどのようなものか?
(A)円の直径が作る直線族の包絡線であるが,コペルニクスの定理により,動円の直径の両端は互いに直交する2直線に端点を載せながら動きます.直径の中点は半径が動円の半径の半分の円,中点以外の点は楕円を描きます.そして,この集合の境界をなす曲線はアステロイドになります.
アステロイドは固定された円の内部に直径が1/4のもう一つの円が入っていて,小さい円が大きい円に内接し滑ることなく大きい円に沿って回転するときの動円上の定点の軌跡です.
さらに,一般化した定理を紹介します.
ある曲線に沿って,滑ることなく転がる半径rの円周上の点Pの軌跡は,同じ曲線に沿って一緒に半径2rの円を転がしたとき,この円に固定された直径が作る直線族の包絡線になる(2円定理)
直線上を転がる円周上の点の軌跡はサイクロイドとして知られています.直線も半径が無限大の円と考えることができますから,このとき転円の直径が作る直線族の包絡線は大きさが半分のサイクロイドになることが2円定理より証明されます.
同様に,半径rの固定円のまわりを転がる半径rの円周上の点Pの軌跡はカージオイドになりますが,一緒に半径2rの円を転がしたとき,この円に固定された直径が作る直線族の包絡線もカージオイドになります.
さらに,
(1)円周上の光源からからでた光線が反射されてできる直線族の包絡線はカージオイドになる
(2)平行光線が円周で反射されてできる直線族の包絡線はネフロイドになる
ことも証明されます.
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【8】コペルニクスの逆定理
(Q)円周mの大円がある.この円に内接しながら円周1の小円が転がるとき,1周するまでに小円は何回転するか? また,外接しながら転がるときは何回転するか?
(A)論より証拠,実際にやってみるとそれぞれm−1回転,m+1回転する.もちろん円周の内側と外側で長さが違うわけではない.パップス・ギュルダンの定理をもちだすまでもなく,この問題のポイントは,小円が自転しながら同時に1公転していることにある.また,大円は任意の閉曲線としても構わない.
「コペルニクスの定理」の主従を逆転させてみます.
(Q)大円(半径R)の内部に半径r=R/2の小円が入っているとする.大きい円(動円)が固定された小さい円(定円)に接しながら滑ることなく小さい円に沿って回転すると,大円上の直径の両端はどのような軌跡を描くか?
(A)一般に,大円(半径R)の内部に半径r(<R)の小円が入っているとする.大きい円(動円)が固定された小さい円(定円)に接しながら滑ることなく小さい円に沿って回転すると,動円上の定点(たとえば,直径の両端点)はペリトロコイドを描く.
r=R/2の場合,動円の回転の向きによって,カージオイドを描く・デルトイドを描くことになる.
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