■力の統一・物質の統一(その3)
20世紀物理学には大きなブレイクスルーが2回起こった。20世紀の物理理論でもっとも革命的なものは、「量子論」と「相対性理論」といえましょう。
「量子論」も「相対性理論」もある極限の性質としてニュートン力学を含んでいます。プランク定数をゼロとしてよい極限で量子論はニュートン力学になるし、光速度に比べて遅い速度の極限では特殊相対性理論はニュートン力学に、また、一般相対性理論は重力を無視した極限で特殊相対性理論になります。このように、より進んだ理論が旧来の理論をひとつの極限として含むという考えは、それ以後の新理論を構築する上での参考になっています。
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【1】相対性理論
アインシュタインは空間と時間が時空と呼ばれるひとつのものの異なる様相に過ぎないことを見抜きました。これによって重力と時空が統一されることになります。
大きな質量の物体によって、時空はゆがみ、万有引力として説明されている重力は時空のゆがみの結果生じるのである。ちょうどトランポリンの上にビリヤード球を置くとくぼみができ、まわりにあるビー球がそこの転がり込みのと同じように…
このように、アインシュタインは重力をニュートンが理解したように離れたところから作用する力というのではなく場の性質と考えました。すなわち、重力場では物質が存在するとそのまわりの時間・空間が曲がると考えて、重力現象が時空の曲率に比例すると仮定し、非ユークリッド幾何学を用いて重力場の性質を説明しています。ニュートンは宇宙空間が3次元ユークリッド空間であると想定していたのに対し、アインシュタインは重力場の強さが空間の歪みに依存することを説明するために、コペルニクスが宇宙の中心としての地球の位置を否定したようにユークリッド空間が幾何学において果たしていた中心的役割を排除し、空間が変化する曲率をもつリーマン幾何学に重力の解明への道筋を見いだしたのです。
また、重力場の方程式は、宇宙は無限であるというより有限だが境界がない世界であることを意味しています。これらの着想はまさにコペルニクス的大転回であり、これまで考えられた宇宙モデルの中でもっとも偉大な概念といってもいいでしょう。アインシュタインの重力方程式では、ニュートン力学では記述することができない重力理論、例えば、重力波の伝播なども予測されていて、ニュートンを超える重力理論はこの方程式にまとめられています。一般相対性理論の完成後、アインシュタインはそれを拡張した統一場理論へと進むことになりました。アインシュタインにとって、ニュートンの理論はその第1近似に過ぎなかったのです。
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【2】量子力学
1925年,ハイゼンベルグが行列力学を,シュレディンガーが波動力学を提唱しました.ハイゼンベルグは電子が粒子であることを前提とし,行列方程式を導きました.一方,シュレディンガーは電子の波動的性質から波動方程式を導きました.行列力学と波動力学は,別々に独立に存在し,それぞれが前提としていたことが大幅に異なっていたのですが,形式こそ違え,物理的には等値で,「量子力学」という1つの理論を表現していることが証明されました.
このことは,2つの体系の最初の前提,すなわち行列力学における粒子という見方と波動力学における波動という見方の正当性をも示唆しています.量子力学によって,原子の構造は厳密なものに修正されました.量子力学の教えるところによれば,電子の軌道はボーアの考えたような軌跡を追跡できるものではなく,電子は原子内の任意の点にある存在確率をもって存在しうることを示しています.つまり,電子は単なる粒子でも単なる波でもなく,粒子であると同時に空間に広がる波(wavicle=wave+particle)であって,1個の電子は軌道をもつというよりも原子核を取り巻く雲のような存在であり,電子の確率分布はしばしば電子雲という言葉で呼ばれています.
まるで雲をつかむような話ですが,量子力学的原子模型のカギは電子の粒子性と波動性の二重性格が握っていて,量子力学においてプランク定数hを0に外挿した極限が古典力学であり,h→0の極限を考えると粒子のもつ波の性質は消えてしまい古典力学の世界に入り込むことになります.プランク定数をゼロとしてよい極限で,量子論はニュートン力学になるのです.
電子の運動はニュートンの運動方程式(古典力学)でなく,シュレディンガーの波動方程式(量子力学)によって支配され,波動方程式は粒子性と波動性を同時に説明しうる物理学の基礎式になっているというわけですが,このことを少々哲学でシンボリックに書けば,
量子力学→古典力学 (h→0)
と表現することができます.
世界を見るスケールが小さくなればなるほど、物事はランダムになっていくというのがハイゼンベルグの不確定性原理である。
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