■整数の表現(その15)
【4】オイラーの五角数定理と分割数の再帰関係式
Π(1-q^n)=Σ(-1)^kq^(k(3k-1)/2))
=1−q−q^2+q^5+q^7−q^12−q^15+q^22+q^26−q^35−q^40+q^54+q^57−q^70−q^77+q^92+q^100−・・・
の級数の係数はすべて1か−1であり,1が2つ,−1が2つ,・・・と繰り返します.
この等式もオイラー積のように「無限積=無限和」型の等式ですが,指数の数列がピタゴラスの五角数と関係していることから,五角数定理と呼ばれています.オイラーはこの定理の証明にほぼ10年を要した(発見は1741年,証明は1750年)のですが,その間,たとえ完全な証明は与えられなくとも正しいことは間違いないことを確信していて,結果の正しさについて,微塵の疑いも抱いていなかったようです.現在,五角数定理にはヤコビの三重積公式による証明やフランクリンによる組合せ的証明がありますが,オイラーの五角数定理はヤコビの三重積公式を使うとあっさり証明できます.
オイラーの五角数定理を用いると,分割数に対する再帰関係式
Σp(n-j(3j±1)/2)(-1)^j=0
p(n)=p(n-1)+p(n-2)-p(n-5)-p(n-7)+p(n-12)+p(n-15)-・・・
が得られます.右辺のpは()内が0以上である限り続けられる.ただし,p(0)=1とみなす.符号は2つずつ組になって反転しています.
たとえば,n≦30に対して,p(n)の値がすべてわかっていれば,p(31)は
p(31)=p(30)+p(29)−p(26)−p(24)+p(19)+p(16)−p(9)−p(5)
で計算できます.再帰的に用いることで,p(n)値がすべて計算できるのですが,それにしても不思議な公式です.これより
p(0)=1,p(1)=1,p(2)=2,p(3)=3,p(4)=5,p(5)=7,p(6)=11, p(7)=15,p(8)=22,p(9)=30,p(10)=41,p(11)=56,p(12)=77,・・・
を効率的に計算することができます.
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また,オイラーは次の定理も証明している.
nの約数の和をσ(n)とするとき,
σ(n)=σ(n-1)+σ(n-2)-σ(n-5)-σ(n-7)+σ(n-12)+σ(n-15)-・・・
右辺のσは()内が0以上である限り続けられる.ただし,σ(0)=nとみなす.
たとえば,
σ(p)=1+p
σ(11)=1+11=12
σ(11)=σ(10)+σ(9)-σ(6)-σ(4)=18+13−12−7=12
σ(12)=1+2+3+4+6+12=28
σ(12)=σ(11)+σ(10)-σ(7)-σ(5)+σ(0)
=12+18−8−8+12=28
普通,σ(n)を求めるにはnの約数を求めなければならない(nの素因数分解を知る必要がある.しかし,この関係式を使うとその必要はなくなるのである.
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