■整数の表現(その10)
【3】ヨハン・アルブレヒト・オイラー
以下,37個の5乗数の和,73個の6乗数の和,・・・と続きます.この最良値を完全に決めることはまだできていませんが,下限については,ガウス記号を用いて
g(k)≧2^k+[3^k/2^k]−2
は証明されています.1≦k≦10では
k 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
下界 1 4 9 19 37 73 143 279 548 1079
となり,ここに示した値はすべてこの式を満たし,かなりの範囲のところまで正しいことが確認されます.このことから
g(k)=2^k+[3^k/2^k]−2
と予想されています.
g(k)≧2^k+[(3/2)^k]−2
の不等式を証明したのはオイラーの息子,ヨハン・アルブレヒト・オイラー(1772年)で,この式では等号が成立すると予想されているのです.
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(Q)kを正の整数として,n=2^k[(3/2)^k]−1とするとき,n=x1^k+・・・+xg^kと書かれるような最小の正の整数gを求めよ.
(A)簡単のため,q=[(3/2)^k]とおく.このとき,
2^kq−1<3^k
であるから,nをk乗数の和として表すときに1^kと2^kしか使えないことがわかる.
7=2^2+1^2+1^2+1^2
23=2・2^3+7・1^3
のように,n=2^k+・・・+2^k+・・・とできるだけ2^kを並べ,あとは1^k+・・・+1^kとすればよい.
また,
n=2^k・q−1
は2^kを最大でq−1個含むことに注意すると
n=2^k{q−1}+2^k−1
つまり,2^kをq−1個,1^kをn−2^k{q−1}=2^k−1個使って表すしかない.nをk乗数の和として表すのに必要な最低限の個数は
g=q−1+2^k−1=2^k+q−2
よって
g(k)≧2^k+[(3/2)^k]−2
が成り立つ.
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[補]ウェアリングの問題の対するヨハン・アルブレヒト・オイラーの不等式『kを正の整数として,n=2^k[(3/2)^k]−1とするとき,n=x1^k+・・・+xg^kと書かれるような最小の正の整数g(k)について,不等式
g(k)≧[(3/2)^k]+2^k−2
が成り立つ』
を紹介しました.
n=2^k[(3/2)^k]−1はkに縛られた特別な値であって,任意の整数ではなく一般性が失われています.無論,任意の整数はすべてこの式で表せるわけでもありません.
しかるに,ウェアリングの問題のかなりの範囲のところまで正しいことが確認されています.ヨハン・アルブレヒト・オイラーの不等式は,局所情報から何がわかるかという局所情報から大域的な情報を引き出す数学の例になっています.この点がこの不等式の最大の特長なのです.
一般に,Ak=[(3/2)^k],Bk=(3/2)^k−[(3/2)^k],Ck=[(4/3)^k]とおけば,すべての正の整数kについて
[1]Ak+2^kBk≦2^kのとき
g(k)=[(3/2)^k]+2^k−2
[2]Ak+2^kBk>2^kかつAkCk+Ak+Ck=2^kのとき
g(k)=[(3/2)^k]+[(4/3)^k]+2^k−2
[3]Ak+2^kBk>2^kかつAkCk+Ak+Ck>2^kのとき
g(k)=[(3/2)^k]+[(4/3)^k]+2^k−3
が成り立ちます.ただし,[2],[3]の条件を満たすkはまだひとつも見つかっておらず,k≦4716×10^5のときはすべて[1]の条件を満たすとのことです.
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[補] 3^k=q2^k+r,0<r<2^k
であるが,
r≦2^k−q
の仮定の下に
g(k)=2^k+[(3/2)^k]−2
が証明されていることに注意.
しかし,この仮定はすべてのkに対して成り立つわけではない.6≦k≦400については証明されているが,高々有限個のkについては誤りであることがわかっている.
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