■シンク積分(その2)

【2】シンク積分

 

シンク積分(あるいはディリクレ積分)

  ∫(0,∞)sincxdx=∫(0,∞)sinx/xdx=π/2

はよく知られていて,複素積分などを用いて求めることができる.

 

 また,決して有名ではないが,

  ∫(0,∞)sincxsinc(x/3)dx=π/2

  ∫(0,∞)sincxsinc(x/3)sinc(x/5)dx=π/2

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  ∫(0,∞)sincxsinc(x/3)sinc(x/5)・・・sinc(x/13)dx=π/2

も成り立ち,これらは一般に

  ∫(0,∞)Πsinc(kx)dx=π/2

と書くことができる.

 

 Mathematicaを用いて計算してみても,

  ∫(0,∞)Πsinc(kx)dx,

  k=1/(2i+1),i=0~

において,i≦6でπ/2となる.

 

 ところが,i=7のとき,

  ∫(0,∞)sincxsinc(x/3)sinc(x/5)・・・sinc(x/13)sinc(x/15)dx=R*π

  R=467807924713440738696537864469/935615849440640907310521750000

   =0.499999999992646・・・

となって,π/2とはならないのである.

 

 これは数式処理ソフトのバグのようにみえるかもしれないが,このような器用なバグは作ることは難しい.いろいろ試してみると間違いであるとは考えにくく,本件では「数式処理ソフト」は正しいということになりそうである.

 

 さらに検証してみると,i≧7で右辺はπ/2にはならず,i=8では,

  ∫(0,∞)sincxsinc(x/3)sinc(x/5)・・・sinc(x/15)sinc(x/17)dx=R*π

  R=17708695183056190642497315530628422295569865119/354173907883011952948983529875210935040000000

i≧9でも同様に,有理数ではあるが簡単なものにはならなかった.

 

 次に,係数を変えて

  ∫(0,∞)Πsinc(kx)dx,

  k=1/(3i+1),i=0~

を計算してみた結果,i≦10でπ/2となった.i≧11は計算しなかったが,一体どうなっているのだろう.(これ以外のケースも試したが,感心なことに,Mathematicaではそれなりに答えを出してくれるのである.)

 

 この件に関しては証明ができればさらに面白いのだが,ルベーグ積分の可能性との関連で,証明は面倒になりそうである.実際に証明に挑戦してみないとわからないが,数式ソフトの問題ではなく,証明可能な式のようだ.

  ∫(0,∞)sincxdx=∫(0,∞)sinx/xdx=π/2

という事実から何とかするのだと思うが,・・・

 

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