■オイラーの素数式(その1)
x^2+x+41=0
はx=0のとき素数41,x=1で素数43,x=2で素数47を与えます.このようにしてxが0から39までのどのxをとってもこの式はすべて素数を与えます(オイラー,1772年).
41,43,47,53,61,71,83,97,113,131,151,173,197,223,251,281,313,347,383,421,461,503,547,593,641,691,743,797,853,911,971,1033,1097,1163,1231,1301,1373,1447,1523,1601
x=40で1681=41^2となって破綻しますが,1000万以下のnに対して47.5%の確率で素数を生成します.
これらの事実を確認するのは簡単ですが,しかしオイラーはどうやってこんな事実を見つけだしたのでしょうか.また,そうなる真の理由は何なのでしょうか.
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【1】ベイカー・スタークの定理
どういう負の数−dを使った整数環Z(√−d)で,素因数分解は一意となるのでしょうか? この答えは既に知られていて,次の9つの虚2次体の部分集合となる整数環Z(√−d)
d=1,2,3,7,11,19,43,67,163
に限られるというものです.1966年,アメリカのスタークとイギリスのベイカーは独立に類数1の虚2次体Q(√d)すなわち(d<0,dは平方因子をもたない)なる2次体をすべて決定したのです.ただし,最初の2つ以外ではーd=1(mod4)なので,半整数a,bを使って,a+b√−dを作る必要があります.
{a+b√−d|Z,Z+1/2}
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ずいぶん以前からこの9個の数は知られていたのですが,10番目の数が存在するかもしれない・・・というまどろっこしい状態が続いていました.
1952年,ヘーグナーは1世紀以上も未解決だった9個ですべてだというガウスによる予想を証明しているのですが,彼は高校の教師で研究者として部外者であり,その証明を標準的な手法で書かなかったため,長らく間違ったものとみなされていました.
ところが,1966年,ベーカーとスタークが独立に世界中を納得させる証明を与えたのを契機に,ヘーグナーの証明がはじめて注意深く吟味され,その証明が本質的には正しいことが明らかになりました.それは不正確であるとして無視されたヘーグナーの証明の誤りを払拭するものでもありました.これでヘーグナーに対する批評が公正でないことが明らかになったのですが,残念ながら,ヘーグナーは1965年に亡くなっており,自らの名誉回復をその目で見ることはできませんでした.現在,9個の数
−d=1,2,3,7,11,19,43,67,163
はヘーグナー数と呼ばれています.
また,1968年,ドイリングはヘーグナーの証明を修正することに成功しましたが,既にそのときはベイカー,スタークに先を越されていて遅きに失した状況にありました.
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