■調和数の整除性(その2)

【2】eの無理数性

 素数が無限に存在すること,√2が無理数であることは,ギリシア数学のなかでも有名な定理です.それぞれユークリッドとピタゴラスが背理法を用いて証明していますが,その証明はだれしもが容易に理解できるものです.eの無理数性も背理法を用いて容易に示すことができます.

 

(問)e=1+1/1!+1/2!+1/3!+・・・+1/n!+・・・が無理数であることを証明せよ.

(証)整数p,qが存在して,

  p/q=1+1/1!+1/2!+1/3!+・・・+1/n!+・・・

のように書けるものと仮定する.

  p/q=(1+1/1!+1/2!+・・・+1/q!)+(1/(q+1)!+1/(q+2)!+・・・)

 

 両辺をq!倍すると,

  p(q−1)!=(q!+q!/1!+q!/2!+・・・+q!/q!)+(1/(q+1)+1/(q+1)(q+2)+1/(q+1)(q+2)(q+3)+・・・)

ここで,p(q−1)!は整数,(q!+q!/1!+q!/2!+・・・+q!/q!)も整数.

 また,

  1/(q+1)+1/(q+1)(q+2)+1/(q+1)(q+2)(q+3)+・・・

 <1/(q+1)+1/(q+1)(q+1)+1/(q+1)(q+1)(q+1)+・・・=1/q

となり,

  1/(q+1)+1/(q+1)(q+2)+1/(q+1)(q+2)(q+3)+・・・

は小数であることがわかる.

 

 以上より,整数=整数+小数となって矛盾.eが有理数であるという仮定に誤りがあり,有理数ではあり得ないことを示している.したがって,eは無理数である.

 

 1744年,オイラーはこのようにしてeの無理数性を示したのですが,さらに,1873年,エルミートはeが超越数であることを証明しました.これに対して,πが無理数であることを示したのはランベルト(1761年)であり,最終的にリンデマンがπは超越数であること証明しました(1882年).リンデマンはエルミートの方法を発展させ,πの超越性を示したのです.

 

(問)n→∞のとき,数列 Sn=1+1/1!+1/2!+1/3!+・・・+1/n! が,数列 Tn=(1+1/n)^n と同じ極限eに収束することを示せ.

(証)2項定理により,

  Tn=1+n・1/n+n(n-1)/2!・1/n^2+・・・+n!/n!・1/n^n

   =1+1+(1-1/n)・1/2!+・・・+(1-1/n)(1-2/n)(1-(n-1)/n)・1/n!

 n→∞のとき

  Tn→1+1/1!+1/2!+1/3!+・・・+1/n!+・・・=e

 

 分母の階乗の値が急速に増大するため,数列Snは非常に速く収束しますが,数列Tnの極限値を直接計算するのは収束が遅くて非効率的です.

 なお,2<e<3は次のようにして示すことができます.

 (証) n!=1・2・3・・・n>1・2・2・・・2=2^(n-1)

より,

  e=1+1/1!+1/2!+1/3!+・・・+1/n!+・・・<1+1+1/2+1/2^2+・・・+1/2^(n-1)=3

  2<eは明らかである.

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