■パスカルの三角形の整除性(その5)
【5】二項係数の偶奇性(1)
シェルピンスキーの三角形の数学的な背景について調べてみよう.
(Q)(a+b)^nの二項展開の係数は,nが2^k−1の形であるとき,そのときに限りすべて奇数となることを証明せよ.
(A)(a+b),(a+b)^2,・・・,(a+b)^n-1に対して成り立っていると仮定して,(a+b)^nに対しても成り立つことを証明する.
両端の1を除くn−1個の二項係数は
n/1=n,n(n−1)/1・2,・・・,n(n−1)・・・1/1・2・・・(n−1)=n
これらがすべて奇数であるための必要十分条件は
[1]両端のnが奇数であること
[2]残りの数の分母,分子から奇数を取り去って作られる数が奇数であることである.
n=2m+1とおけば,これらの数は
m/1=m,m(m−1)/1・2,・・・,m(m−1)・・・1/1・2・・・(m−1)=m
で表される.m<nであるから,このm−1個の数はmが2^k-1−1の形であるとき,そのときに限りすべて奇数となる.
n=2m+1=2(2^k-1−1)+1=2^k−1
より,QED.
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n=2^k−1,すなわち,1,3,8,15,31,・・・5,のとき,nCmは奇数である段が出来あがる.すると,
n+1Cm=nCm-1+nCm
により,n=2^kのとき,nCmは偶数となる.
詳細に調べると,
[1]n=pのとき,nCmはpの倍数である
両端nC0=nCn=1ですから,両端以外のnCm(1≦m≦n−1)について考えます.n=pのとき
pCm=p!/m!(p−m)!
1≦m≦p−1,1≦p−m≦p−1より,分母は素因数pを含んでいない.よって,pCmはpの倍数である.
[2]n=2^kのとき,nCmは偶数である
(a+b)^2=a^2+{係数が偶数の項}+b^2
{(a+b)^2}^2=a^4+{係数が偶数の項}+b^4
{(a+b)^4}^2=a^8+{係数が偶数の項}+b^8,・・・
数学的帰納法より,nCmは偶数である
[3]n=2^k−1のとき,nCmは奇数である
[2]より,n+1Cmは偶数である.
n+1Cm=nCm-1+nCm
1+nC1=偶数→nC1は奇数
nC1+nC2=偶数→nC2は奇数,・・・
よって,nCmは奇数である.
さらに,nCmがすべては奇数になるのは,n=2^k−1のときに限るというのが当該の命題です.実際,他の行には偶数があるのですが,
[4]n=2^kのとき,両端以外のnCm,2^k−1個はすべて偶数である
[5]n=2^k+1のとき,真ん中のnCm,2^k−2個はすべて偶数である
[6]n=2^k+2のとき,真ん中のnCm,2^k−3個はすべて偶数である
・・・・・・・・・・・・・・・
[7]n=2^k+1−2=2^k+2^k−2のとき,真ん中のnCm,2^k−(2^k−1)=1個はすべて偶数である
[8]nCmがすべては奇数になるのは,n=2^k−1のときだけ
ということになります.
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まとめると,nCm(m=0〜n)がすべては奇数になるのは,n=2^k−1のときに限る.さらに,k>1に対してnCm(m=1〜n−1)がkで割り切れるための必要十分条件は,kが素数であって,n=k^mの形に書けるときに限る.
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