■数学と科学と芸術と(その5)
ダリのパラダイムシフトが如実に現れている作品が「記憶の固執(1931年)」と「記憶の固執の崩壊(1954年)」の対比です.前者は時間と空間の流動性を示唆しているのに対し,後者では前者に描かれていたものがブロック化され,物質とエネルギーは離散的な量子に分解されるというハイゼンベルグの量子物理学的な視点が採用されているという特徴があります.
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【5】ダリと相対論
20世紀の入ろうとするころ,物理学は巨大な矛盾に悩まされていました.アインシュタインが問題にした矛盾とは,ニュートンの運動力学とマクスウェルの電磁気学の間に見られる不一致のことです.
電磁気学では光の速度は常に一定であると説明されているのに対して,ニュートンの力学では一つの物体の運動は別の物体に対する相対的な運動として測定されますが,光の速度の相対的な変化は誰にも測定できず,光源が近づいてくる場合でも,離れていく場合でも常に同じ速度であるのですが,アインシュタインはその理由を知りたかったのです.
結局,光速が一定になるためには時間の流れる速さが異なったり,空間の大きさが縮んだり広がったりすることが必要です.1916年の一般相対性理論では運動やエネルギーや質量が空間と時間をゆがめるというものでした.重力も空間と時間がエネルギーによってゆがめられたことによって生じるのです.このアインシュタインの考えは驚きを迎えられることとなりました.
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