■位相幾何(その6)
(A)泡細胞の合胞体は,シュレーフリ記号{p,q,r}で表記され,各頂点にp角形がq面集まる多面体が各辺にr個集まる,すなわち,多面体(p,q)の各面が2つの(p,q)に属し,各辺がr個の(p,q)に属すとします.
[参]コクセターの「最密充填と泡」に関する論文
Coxeter: Close packing and froth, Illinois Journal of Mathematics 2, 746-758 (1958)
によると,頂点の周囲は4直角未満ですから, (p, q)についての不等式
2q(1−2/p)<4, すなわち, 1/p+1/q>1/2 が必要条件ですし, (q, r)についても同様ですから, p,q,rに関する不等式
1/p+1/q>1/2 (p,q≧3)
1/q+1/r>1/2 (q,r≧3)
さらに,有限群であるという条件が付加されるとスタインバーグの公式より,2次不等式
p−4/p+2q+r−4/r<12
p−4/p<12−2q−r+4/r
p^2−(12−2q−r+4/r)p−4<0
が得られます.
泡細胞の合胞体の場合,1個の頂点に3個の辺が集まり,1本の辺の周りに3個の泡細胞が会することから,q=r=3とおくと
p^2−(13/3)p−4<0
p<(13+√313)/6=5.1153
多面体の頂点,辺,面の数をそれぞれv,e,fとすると,pf=2e,qv=2eが成り立ちます.さらに,v+f=e+2(オイラーの多面体定理)が成り立ちますから
1/e=1/p+1/q−1/2
v=4p/(2p+2q−pq),
e=2pq/(2p+2q−pq),
f=4q/(2p+2q−pq)
となります.q=3で,球面をp角形で覆うとしたら,
f=12/(6−p)
v=4p/(6−p)
e=6p/(6−p)
p=(13+√313)/6を代入すると
f=(23+√313)/3=13.564
v=2(17+√313)/3=23.128
e=17+√313=34.692
こうして,泡の平均の姿は23.128個の頂点,34.692本の辺,13.564枚の面からなる面が5.1153角形の立体となることがわかります.平均的な泡細胞は14面体に近いものになるというわけです.
1887年,ケルビン卿(ウィリアム・トムソン)は14面体の集合によって空間を満たすことができ,そのときの界面積は菱形十二面体で満たしたときより小さいことを発見しました(ケルビン問題の解).このことから14面体は表面張力を最小とする空間分割構造であると考えることができます.ケルビンの14面体は,3対の合同な四角形の面と4対の合同な6角形の面とで囲まれています.最も簡単な場合は,6個の正方形と8個の正六角形とからなり,すべての辺の長さが等しいものが切頂八面体です.切頂八面体は13種ある準正多面体(アルキメデス体)のひとつです.
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