■射影幾何(その9)

【2】ポンスレーの定理

小円を大円の内部におく.大円上の点P0から小円へ接線を引き,大円と交わる点をP1とする.P1から再び小円へ接線を引き,大円と交わる点をP2とする.この2つの円の中間に次々に接する接線列を作る.たいていの場合,最後の交点は最初の点P0と重ならない.しかしときとして完全に重なる場合がある.このとき,最初の点P0をどこに選ぼうとも完全な多角形環をなす.

シュタイナーの定理とポンスレーの定理,2つの定理は円鎖が閉じるか接線多角形が閉じるかの違いだけで,内容的には類似した定理に感じられるかもしれない.しかし,シュタイナーの定理は円を円に写すメビウス変換w=(az+b)/(cz+d)により同心円の場合に帰着させて証明できるのに対して,ポンスレーの定理ではそれができない.その意味で 2つの定理は似て非なるものである.また,シュタイナーの定理の基底は2次式であったが,ポンスレーの定理では高次式になる.その意味では後者のほうが本質的に難問である.

2つの円が同心円のとき

外接円の半径:R

内接円の半径:r

とおくと,正n角形ではR=rsec(π/n),星形n/m角形ではR=rsec(mπ/n)が成り立つ.同心円でないとき,

外接円と内接円の中心間距離:d

とおく.

[1]任意の三角形は外心・内心をもつ.2心間の距離について,2次同次式:

R^2-2Rr=d^2

が成り立つ(オイラー).

オイラーの関係式を導き出すことは見かけより厄介であるが,ポンスレーの定理を使えば簡単に導き出せる.オイラーの関係式を導き出せば,正三角形でない場合,直ちにR ≧ 2rがわかる.

[2]任意の三角形は外心と内心をもつが,四角形ではそうではない.しかし,双心四角形の場合,4次同次式:

2r^2(R^2+d^2)=(R^2-d^2)^2(フース)

が成り立つ

[3]双心五角形の基底は

  d^6-2d^4rR+8d^2r^3R-3d^4R^24d^2r^2R^2

+4d^2rR^3+3d^2R^4+4r^2R^4-2rR^5-R^6=0

であり,

n=3: 3次同次式

n=4: 4次同次式

n=5: 6次同次式

n=6: 8次同次式

n=7: 12次同次式

n=8: 16次同次式

となる.

[4]また,星形n角形では( r→ -r)と置き換える必要があり,星形五角形の基底は,

  d^6+2d^4rR-8d^2r^3R-3d^4R^2-4d^2r^2R^2

-4d^2rR^3+3d^2R^4+4r^2R^4+2rR^5-R^6=0

で与えられる.

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[補]19世紀に入って射影幾何額の原理を発見したのはポンスレーであった.ナポレオンのロシア遠征に従軍した彼は置き去りにされ,ロシア軍に捕らえられ,投獄された.獄中で射影法と円錐曲線の研究を始めたポンスレーは射影されたとき変化しない図形の性質,たとえば,共線や間隔と間隔の特殊な比率などをみつけた.これらは射影幾何学の基本となり,また,すべての円錐曲線は円の射影と考えられるから射影幾何学の研

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