■代数幾何(その6)

フェルマー予想とは

『x^n+y^n=z^nでn≧3のとき,x,y,zは正の整数解をもたない』

・・・フェルマー自身は「驚くべき証明を私は見つけたが,これを記すには余白が狭すぎる」という謎めいた言葉を残している.

 フェルマーが愛読した古代ギリシャのディオファントスによる本「アリスメティカ(算術)」の欄外の余白にこの書き込みをしたのは1637年頃で,たった8文字で書かれたこの単純な式はフェルマー予想と呼ばれ,人類の頭を悩まし続け,多くの高名な数学者がフェルマー予想に挑戦したにもかかわらずことごとくそれを退けてきました.

フェルマー予想は360年ものあいだ未解決の数学的難問であったのですが,1994年,イギリス人で米国プリンストン大学の数学者ワイルスがその証明に成功し,かくして「予想」は「定理」となりました.難攻不落のフェルマー城はついに落城したのです.

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【1】指数4の場合

フェルマーの問題は,n=1のときにはx+y=zという単なる足し算ですから,xとyにどんな自然数を入れても自然数zは必ず存在します.n=2の場合はピタゴラス方程式と呼ばれ,無数の解をもち,しかもすべての解をもれなく求めることのできる公式も知られています.n=4の場合は,フェルマー自身が無限降下法という一種の背理法を用いて0と1の中間に整数が存在するという矛盾を導き出すことによって証明が与えられました.

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[Q]不定方程式:x^2+y^2=z^2,(x,y,z)=1はx,yのどちらか一方が2uv,他方がu^2−v^2の形で,zがu^2+v^2の形をしているとき,そのときに限り満足されることを証明せよ.ただし,(u,v)=1でuvは偶数.

[A]x^2+y^2=z^2が成立したとすれば,x,yのいずれかは偶数でなければならない.xがそうだとすれば

  (x/2)^2=(z+x)/2・(z−x)/2

しかも((z+x)/2,(z−x)/2)=1.ゆえに,

  x/2=uv,(z+x)/2=u^2,(z−x)/2=v^2

となる整数u,vが存在する.

 すべてのピタゴラス数が,

  x=2uv,y=u^2−v^2,z=u^2+v^2

のように表されることは,x^2+y^2=1上のすべての有理点が

  (2t/(1+t^2),(1−t^2)/(1+t^2))

であることによっている.

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[Q]不定方程式:x^4+y^4=z^4は整数解をもたないことを証明せよ.

[A]x^2+y^2=z^2が成立したとすれば,xを偶数として

  x^2=2uv,y^2=u^2−v^2,(u,v)=1

と書ける.もしuが偶数なら,y^2=4N+1,u^2=4N1+1,v^2=4N2,4N+1=4N1−4N2−2となって矛盾が起こるから,vは偶数である.

 ゆえに,u=z1^2,v=2w^2,y^2+4w^4=z1^4,2w^2=2u1v1,u1=x1^2,v1=y1^2,x1^4+y1^4=z1^2となるが,z1<zだからこれは不可能(x^4+y^4=z^2が整数解をもたないことから,当然x^4+y^4=z^4も整数解をもたない).

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