■代数幾何(その1)

古来より,美しい曲線や図形は人々の感性に訴え,深い感動を与えると同時に,理性にも訴え,なぜこうなっているのかというインスピレーションとイマジネーションを駆りたててきた.代数学(数)は幾何学(図形)と張り合う数学の領域として発展してきたのであるが,今日では数と図形の統一がなされ,代数学・幾何学・解析学が絡み合い,溶け合って,ひとつの統一世界を作っている.それが「代数幾何学」と呼ばれる研究領域で,難解な数学用語を使うならば代数的閉体上で展開された位相的概念を伴った代数学ということができるであろう.

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【1】代数幾何の問題

[1]y^2=x^3−2

フェルマーは

y^2=x^3−2

の正整数による唯一の解は(x,y)=(3,5)であると主張した.26から1をひくと25(平方数)であり,26に1を加えると27(立方数)である.

5^2+1=26=3^3−1

このように平方数と立方数に挟まれる数は他にはないというのが,フェルマーの主張である.

(証)y^2+2=(y+i√2)(y−i√2)

(y+i√2)=(a+bi√2)^3

=a^3+3a^2bi√2−6ab^2−2b^3i√2

=(a^3−6ab^2)+(3a^2b−2b^3)i√2

=a(a^2−6b^2)+b(3a^2−2b^2)i√2

(y+i√2)→a(a^2−6b^2)=y,b(3a^2−2b^2)=1

b=±1とすると,(3a^2−2)=±1→b=1のときa=±1

(1,1)→a(a^2−6b^2)=−5=y   (NG)

(−1,1)→−a(a^2−6b^2)=5=y  (OK)

さらにx=3.よって,フェルマーの主張が示された.

26以外に平方数と立方数に挟まれる数はないのです.なお,y^2=x^3−2は(3,±5)以外の整数点をもちませんが,無数に有理点が得られます.たとえば,(129/100,±383/1000).

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[2]y^2=x^3+1

9=3^2と8=2^3は連続する累乗数ですが,このように連続する累乗数も特異な関係です.ミハイレスクの定理(2002年)により,3^2−2^3=1だけが唯一連続するベキ乗数であって,これ以外のどんな数もa^b−b^a≠1であるからです.

証明は略しますが,y^2=x^3+1には整数点は(2,±3),(0,±1),(−1,0)の5つしかありません.また,この楕円曲線には有理点もやはりこの5つしかないのです.

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[3]y^2=x^3−4の整数点は(2,±2),(5,±11)の4個のみですが,有理点は(106/9,±1090/27)など無数個存在します.

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[4]フェルマーの問題

xn +yn =1に,有理数解はあるかどうか? 少し挑戦してみると分かるのですが,これらを証明するのはほとんど不可能に見えるほど難しい問題です.

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