■複素数(その1)

【1】カルダノ

 複素数は難解とか複雑な数ということではなく,実数と虚数という二つの項をもつ数(x+yi)のことで,y=0ならばこの数は実数xになります.複素数はすでに16世紀に3次方程式の解の公式を発見したカルダノなどによって使用されていました.

3次方程式:x^3=px+qの解は,カルダノの公式

  x=3√A+3√B

  A=q/2+√((q/2)^2−(p/3)^3)

  B=q/2−√((q/2)^2−(p/3)^3)

で与えられます.

  x^3=15x+4の場合,

  A=2+√(2^2−5^3)=2+√(−121)=2+11i

  B=2−√(2^2−5^3)=2−√(−121)=2−11i

  x=3√A+3√B=3√(2+11i)−3√(2−11i)

となります.

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ボンベリは,カルダノによる3次方程式の解法を

  x^3−15x−4=0

に適用すると

  x=3√(2+11i)+3√(2−11i)

しかるに,この方程式は明らかにx=4を根にもっているので,

4=3√(2+11i)+3√(2−11i)

という実数=複素数?という奇妙な関係式が成り立つことに気づきました.

  x^3−15x−4=(x−4)(x^2+4x+1)=0

x^2+4x+1=0は2つの虚数解をもつので,x=4でなければならないからです.

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実は

 (2+i)^3=2+11i,(2−i)^3=2−11i

という簡単な関係式が成り立つので,3乗根を外せば

  4=(2+i)+(2−i)

が成り立つのです.同様に

[1]x=(√(28/27)+1)^1/3−(√(28/27)−1)^1/3は整数である

 x^3を計算するとx^3=2−xが成り立つことより,x=1はひとつの実数解となる.(x−1)(x^2+x+2)=0において,x^2+x+2=0は2つの虚数解をもつので,x=1でなければならない.カルダノの公式においてp=−1,q=2の場合に相当している.

[2]x=(√(65/64)+1)^1/3−(√(65/64)−1)^1/3は整数でない

 x^3を計算すると4x^3=8−3xが成り立つことより,x(4x^2+3)=8.8≧4x^2+3≧3より,0<x<3/8.ここでxが整数なら,x=1または2となるが,いずれも4x^3+3x−8=0を満たさない.

カルダノの頃までは代数方程式は実係数のものしか考えなかったばかりでなく,実数解しか考えなかったし,負根は本当の根とは考えられていませんでした.√−1を表す記号iを使い始めたのはオイラーですが,カルダノからベルヌーイとオイラーまで200年間はほとんどだれも複素数の研究をしませんでした.

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