■コペルニクスの逆定理(その11)
【1】通常方式のドリル
円周mの大円がある.この円に内接しながら円周1の小円が転がるとき,1周するまでに小円は何回転するだろうか?
α:小円の中心の大円の中心に対する公転角
β:小円の自転角
として,弧の長さを等しいとおけば
mα=α+β → m−1=β/α
すなわち,m−1回転するのである.
ついでにいうと外接しながら転がるときは
mα=β−α → m+1=β/α
よりm+1回転するが,内接のときと外接のときとでは小円の回転する方向が逆になる.
ドリルの問題では,ローターの(n−1)公転で1回転(自転)するから,
β/α=1/(n−1)
また,
固定子(内歯車,歯数r)
回転子(外歯車,歯数s)
とおくと,大円の円周は小円のr/s(=m)倍と考えることができるから,
m−1=r/s−1=(r−s)/s=1/(n−1)
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【2】ローターに固定された点の軌跡
回転子とつねに相対的位置が不変に保たれた点P(x,y)の運動について調べてみよう.
固定子の中心を原点(0,0),回転子の中心を(x0,y0)として,最初の中心を(a,0)にとる.回転子に固定された点P(x,y)と回転子の中心との距離をRとして,点Pの最初の相対的位置を
x−x0=Rcosγ,y−y0=Rsinγ
にとる.
回転子は原点を中心とする円周上を公転角α(反時計回り)で動くから,
x0=acosα,y0=asinα
また,回転子は中心の周りを自転角β(時計回り)で回転することより
[x]=[cos(−β),−sin(−β)]Rcosγ+x0
[y]=[sin(−β), cos(−β)]Rsinγ+y0
すなわち
x=Rcos(−β+γ)+acosα
y=Rsin(−β+γ)+asinα
β=α/(n−1)
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【3】ロータリーエンジン方式のドリル
回転子(内歯車,歯数r)
固定子(外歯車,歯数s)
とおくと,大円の円周は小円のr/s(=m)倍と考えることができる.そして,
α:大円の中心の小円の中心に対する公転角
β:大円の自転角
として,弧の長さを等しいとおけば
α=m(α−β) → m=α/(α−β)
β/α=(m−1)/m
ローターの(n−1)公転で1回転(自転)するから,
β/α=1/(n−1)
に,m=r/sを代入すると
β/α=(m−1)/m=1/(n−1)
(r−s)/r=1/(n−1)
が求める式となる。
なお,内側の円を固定させて,外側の円をそれに外接させながらそのまわりを回転させる場合は
α=m(β−α) → m=α/(β−α)
β/α=(m+1)/m
となる.外接させる場合はm−1の代わりにm+1が現れる.
通常方式では公転角と自転角が反対回りであったが,ロータリーエンジン方式は同じ向きなので,ローターに固定された点の軌跡は
x=Rcos(β+γ)+acosα
y=Rsin(β+γ)+asinα
β=α/(n−1)
で表されることになる.
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【4】ローターの頂点の軌跡
以下,両方式は公転と自転の回転の向きが同じ方向に回転するか,反対方向に回転するかが異なるだけなので,両方式における頂点Pの軌跡を随伴させて描くことにする.ローターの中心の軌跡(白),通常方式における頂点Pの軌跡(緑),ロータリーエンジン方式における頂点Pの軌跡(黄)であるが,両方式ともローターのn−1個の頂点が描く軌道はすべて一致する.
通常方式ではn=3のとき正三角形からの最大誤差を生ずるが,n>3では,正n角形からの誤差は僅かで円近似は申し分なく適切である.また,ロータリーエンジン方式では軌道の一部が凹となる曲線を描く.
ところで,パスカルのリマソン(蝸牛線)は直交座標系では陰関数となる4次曲線:
(x^2+y^2−bx)^2=a^2(x^2+y^2)
であるが,極座標では
r=a+bcosθ
と表される.
n=3のとき,当該の軌道は
{(x−1/2)^2+y^2+x−1/2}^2=(√(3)/2-2/3)^2((x−1/2)^2+y^2)
で表される.これはx→1/2−x,a√(3)/2-2/3,b=1とおいたものであるからリマソンとなる.
n=4の場合,軌道は繭型となるが,これは2ノードのペリトロコイド曲線と呼ばれているそうである.ペリトロコイド曲線はリマソンの拡張版と考えることができる所以である.
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