■ダリとエッシャー(その3)
エッシャーは20代でスペインのグラナダにあるアルハンブラ宮殿の精緻な装飾的デザインに魅了さた。その経験は彼のインスピレーションの源になり、その後の彼の代表作に見られる特徴的な表現に結実した。
ポリアやハーグの論文を読んで、結晶構造における対称性の重要性を知ったかれは独自の幾何学的格子を用いて、多角形ではなく鳥や魚や爬虫類の入り組んだ形をはめ合わせることによって平面充填したことは(その2)で述べたとおりである。
一方、ダリのパラダイムシフトが如実に現れている作品が「記憶の固執(1931年)」と「記憶の固執の崩壊(1954年)」の対比である。
前者は時間と空間の流動性を示唆しているのに対し、後者では前者に描かれていたものがブロック化され、物質とエネルギーは離散的な量子に分解されるというハイゼンベルグの量子物理学的な視点が採用されている。
また、「最後の晩餐(1955年)」では黄金比が正12面体の形で取り入れられている。正五角形の窓の外にはダリの生まれ故郷カタルーニャの風景が見える。
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