畳あるいはドミノ(1×2の長方形)によるタイル貼りを考える.1辺の長さ2の正方形の畳敷きは2個の畳を水平に置くか垂直に置くかの2通りの敷き方がある.チェス盤(1辺の長さ8)に対しては12988816通りある.統計物理学ではドミノに相当するものが2原子分子であり,ドミノタイル貼りは統計物理学の問題としても一役担っている.
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【1】長方形を畳で敷きつめる
1961年,物理学者のカステレイン,フィッシャー,テンパレイは縦横2辺の長さが任意の偶数(2m×2n)の長方形の畳の敷き方数は
K(n,m)=Π(j=1~n)Π(k=1~m){4cos^2(jπ/(2n+1))+4cos^2(kπ/(2m+1))}
であることを見いだした.これはフィボナッチ数列の三角関数表現の拡張であることは,コラム「フィボナッチ数列の三角関数表現」で紹介したとおりである.
奇数の場合も含め,この敷き方数の求め方は(その1)で解説したが,この不思議な公式には興味深い性質が隠されていて,たとえば,正方形(m=n)の場合には,つねに奇数の2乗を2^n倍したものになる.
K(0,0)=1=2^0
K(1,1)=2=2^1
K(2,2)=36=2^23^2
K(3,3)=6728=2^329^2
K(4,4)=12988816=2^4901^2
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【2】アステカダイヤモンドを畳で敷きつめる
アステカダイヤモンドとは同じ高さの階段を4個貼り合わせてできる図形である.
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×4 ×4 ×4
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n=1 n=2 n=3
n=1のアステカダイヤモンドの畳敷きは2個の畳を水平に置くか垂直に置くかの2通りの敷き方がある.n=2については全部で8通り,一般にサイズnのアステカダイヤモンドの畳敷きは2^n(n+1)/2通りある.
この公式は1992年,4人の数学者エルキース,クーパーバーグ,ラーセン,プロップによって発見されたが,K(n,n)すなわち奇数の2乗を2^n倍したものよりもずっと簡単である.
サイズnのアステカダイヤモンドの畳敷きの数
Dn=2^nDn-1
はサイズn−1のアステカダイヤモンドの畳敷きが与えられたとすると,その各々に対してn個のサイズ1の畳敷き(2通り)の敷き方数(2^n通り)をかけたものの反復によって得られることを示している.正確にいうとn+2個のサイズ1の畳敷きの対称性を考えると4で割る必要があり,したがってn個のサイズ1の畳敷きと同数になるのであるが,実際,そのような図形的な繰り返し式証明法が知られている.
[参]アンドリュース,エリクソン「整数の分割」数学書房
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