■周長積分(その6)
完全楕円積分を用いると,
楕円:x2/a2+y2/b2=1の全周は4aE(e)となります.
∫(0,x)(1+(dy/dx)^2)^(1/2)dx
=∫(0,x)(a^2-k^2x^2)/{(a^2-x^2)(a^2-e^2x^2)}^(1/2)dx
e={(a^2-b^2)/a^2}^(1/2)は離心率
また,レムニスケート:(x2+y2)2=2a2(x2-y2)の全周は√(8)aK(1/√(2))で表されます.すなわち,レムニスケート積分が第1種楕円積分なのに対し,楕円弧長を求める積分は第2種楕円積分であり,パラレルな関係にはありません.
糸の長さlの単振り子の周期はT=4√(l/g)K(k)ですから,したがって,振幅が小さいときT〜2π√(l/g)と表すことができます.
このように,楕円積分は楕円の弧長のみではなく,ばねの非線形振動や振り子の回転・振動など物理現象をを記述する際に現れますが,それ以外の思わぬところでも出現することがあります.
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【2】ランダムウォークと楕円積分
ランダムウォークの再帰性の問題を取り上げましょう.1次元酔歩の原点復帰確率は,
u2n=2nCn/2^(2n)
で与えられます.ここでu0=1,u2n+1=0とします.
u0=1,u2=1/2,u4=3/8,u6=5/16,u8=35/128,u10=63/256,u12=231/1024,
u14=429/2048,u16=6435/32768,u18=12155/65536,u20=46189/262144
unの母関数を
U(t)=Σunt^n
とおくと,u2n=2nCn/2^(2n)ですから,この級数の項比は
u2(n+1)t^2(n+1)/u2nt^2n=(n+1/2)*t^2/(n+1)
これより,級数U(t)は超幾何級数1F0(1/2,t^2)であると同定され,
U(t)=1F0(1/2,t^2)=(1−t^2)^(-1/2)
であることがわかります.
2項展開からすぐにこの関数を思い浮かべることは困難と思われますが,超幾何関数であると仮定すると上のようにして導き出すことができます.
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次に,2次元ランダムウォークの母関数はどう表されるでしょうか? 2次元酔歩では,2項係数に関する公式
ΣnCknCn-k=Σ(nCk)^2=2nCn
が成り立つので,
u2n=1/4^(2n)(2nCn)^2
と表されます.
同様に,unの母関数を
U(t)=Σunt^n
とおくと,u2n={2nCn/2^(2n)}^2ですから,この級数の項比は
u2(n+1)t^2(n+1)/u2nt^2n=(n+1/2)^2/(n+1)*t^2/(n+1)
これより,級数U(t)はガウス型超幾何級数2F1(1/2,1/2,1,t^2)であると同定され,
U(t)=2F1(1/2,1/2,1,t^2)=2/πK(t)
より第1種楕円積分と関係しているというわけです.
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それに対して,3次元以上の酔歩の母関数は複雑で求められそうにありませんでした.なお,d次元超立方格子上のランダムウォークにおいては,
Σu2n=(2π)^(-d)∫(-π,π)Re(1-φ(t))^(-1)dt
φ(t):特性関数φ(t)
ですから,とくに,3次元の場合は,
Σu2n=(2π)^(-3)∫(-π,π)(1−1/3Σcost)^(-1)dt
=(√6/32π^3)Γ(1/24)Γ(5/24)Γ(7/24)Γ(11/24)
=1.51・・・<∞
となります.
この計算はおそらく多変数の一般化超幾何関数を用いて行われるものと推測されますが,小生の力では歯がたちませんでした.いずれにせよ,この式も楕円積分とガンマ関数の関係を示すものになっていると思われます.
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