■周長積分(その5)

【1】楕円積分

 

 一般に,

  f(x)=1/(P(x))^(1/2)

  F(z)=∫(0,z)f(x)dx

において,P(x)が重根をもたない3次,4次の多項式の場合は,初等関数をいくら組み合わせても得られない関数が登場します.

 

  f(x)=1/(1-x^4)^(1/2)

  u=F(z)=∫(0,z)f(x)dx

は,レムニスケート積分と呼ばれる典型的な楕円積分です.

 

===================================

 

 P(x)を3次,4次の多項式とするとき,F(z)は楕円積分,その逆関数F^(-1)(z)は楕円関数と命名されています.歴史的にいうと楕円関数は楕円積分を源とし,楕円積分の逆関数として導入されました.また,楕円曲線はフェルマー予想の解決で注目された曲線で,楕円関数でパラメトライズされる曲線です.→[補]

 

 3次でも4次でもx=1/tとおけば

  dx/{x(x-a)(x-b)(x-c)}^(1/2)=-dt/{(1-at)(1-bt)(1-ct)}^(1/2)

となりますから,本質的には同じものです.また,P(x)を5次以上の多項式とするとき,当該の関数は超楕円積分,超楕円関数と呼ばれます.

 

 たとえば,単振り子の振動周期や楕円の弧長を求める問題を考える場合,k[0,1]をパラメータとする不完全積分

  f(x)=1/{(1-x^2)(1-k^2x^2)}^(1/2)

  f(x)={(1-k^2x^2)/(1-x^2)}^(1/2)

  F(z)=∫(0,z)f(x)dx

が絡んできます.

  f(x)=1/{(1-x^2)(1-k^2x^2)}^(1/2)

  K(k)=∫(0,1)f(x)dx

を第1種完全楕円積分,

  f(x)={(1-k^2x^2)/(1-x^2)}^(1/2)

  E(k)=∫(0,1)f(x)dx

を第2種完全楕円積分と呼びます.

 

 第1種楕円積分は特に重要ですが,第1種楕円積分

  K(k)=∫(0,1)1/{(1-x^2)(1-k^2x^2)}^(1/2)dx (ヤコビの標準形)

で,x=sinθと変換すると

  K(k)=∫(0,π/2)dθ/(1-k^2sin^2θ)^(1/2)  (ルジャンドルの標準形)

また,x=sin^2θ,λ=k^2とおけば

  K(k)=∫(0,1)dz/{(z(1-z)(1-λz)}^(1/2)   (リーマンの標準形)

が成立します.

 

 これらの不定積分は初等関数では表せませんが,たとえば,第1種完全楕円積分は

  K(k)=π/2{1+(1/2k)^2+(3/8k^2)^2+(5/16k^3)^2+・・・}

とベキ級数展開できます.

 

===================================