■周長積分(その2)
(問)2定点P1(−a,0),P2(a,0)からの距離の和が一定となる点の軌跡は楕円,差が一定の点の軌跡は双曲線です.また,商が一定の点は円(アポロニウスの円)を描きます.それでは積が一定の点Mはどのよう軌跡を描くでしょうか.
(答)はカッシーニ曲線.2次の多項式f(x,y)=0,すなわち楕円,放物線,双曲線が円錐を平面で切断したときの切り口として現れたように,カッシーニ曲線はトーラス(ドーナツ)の平面による切断面として現れることが知られています.
{(x+a)^2+y^2}{(x−a)^2+y^2}=c^2
(x^2+y^2)^2−2a^2(x^2−y^2)=c^2−a^4
r^4−2a^2r^2cos2θ+a^4=c^2
定数cが2定点間の距離2aの半分aの2乗に等しいとき,レムニスケート(双葉曲線)と呼ばれます.レムニスケートは8の字形(8を90°回転させ横向きにした∞形)をしていて,その直交座標系での方程式は4次曲線(x^2+y^2)^2=2a^2(x^2−y^2),極座標系ではr^2=2a^2cos2θとなります.
P1M・P2M=(P1P2/2)^2
さらに、2定点を(−1/√2,0),(1/√2,0)と定めると,レムニスケートの方程式は極座標で書くとr^2=cos2θ,直交座標で書くと(x^2+y^2)^2=x^2−y^2となります.したがって,極座標による式のほうが,直交座標による式よりはるかに簡単です.極座標はベルヌーイの時代より前にもときどき使われていたのですが,極座標を広範囲に使用し,多くの曲線に適用してさまざまな性質を最初に見つけたのは,ヤコブ・ベルヌーイでした.
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ここで
(x^2+y^2)^2−(x^2−y^2)=0
をxで微分すると
2(x^2+y^2)(2x+2ydy/dx)−(2x−2ydy/dx=0
dy/dx=-x/y (これは周上の点の動径が接線と直交することを意味する)→ここに誤りがあった。
1+(dy/dx)^2=(x^2+y^2)/y^2
とはなるが、うまくyを消去できず、その後が続かない。
そこで、
r^2=cos2θ
をθで微分してみると
2rdr/dθ=−2sin2θ
1+(rdθ/dr)^2=1+r^4/(sin2θ)^2=1+r^4/(1−r^4)=1/(1−r^4)
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レムニスケートの弧長lは
l=∫(0,r){1+(rdθ/dr)^2}^(1/2)dr
=∫(0,r)2a^2/{4a^4-r^4}^(1/2)
とくに,a=1/√2とおくと,
l=∫(0,r)1/{1ーr^4}^(1/2)
となります.
このようにして,ベルヌーイはレムニスケートの弧長を
f(x)=1/(1-x^4)^(1/2)
u=F(z)=∫(0,z)f(x)dx
と表しました.これがレムニスケート積分と呼ばれる積分です.
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ここで
∫(0,1)f(x)dx=1.311028・・・=ω/2
とおくことにしましょう.2ωがレムニスケートの全長です.円に類比すると,レムニスケートの定数ωは円に対するπと同じ役割を演じていることになります.
さらにまた,レムニスケートには円に共通する性質があり,定規とコンパスだけで奇数のn等分することができる必要十分条件はnがフェルマー素数(n=2^(2^m)+1の形の素数:3,5,17,257,65537)であることです.
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