■放物線・懸垂線・楕円曲線(その7)

【シャボン玉と平均曲率一定曲面】

 石けん膜の数学的定式化として,極小曲面がありますが,石けん膜といえば,シャボン玉を思う浮かべる方も多いと思われます.しかし,シャボン玉は極小曲面ではありません.シャボン玉は中の空気が閉じこめられていて,その容積が変わらないという条件のもとで,面積の変分問題に対応しています.

 ところで,シャボン玉はなぜ丸いのでしょうか? 等周不等式

  S^3≧36πV^2

に関係していることは直感的に発想できるでしょうが,球面はその自明な解です.また,極小曲面が石けん膜であったとき,膜の両側の気圧は等しい状態にあるのですが,膜の両側に気圧差があれば,シャボン玉の中の気圧と表面張力のバランスで半径が決まることになります.

 曲面の各点で曲がり方が最もきつい方向と緩やかな方向がありますが,平均曲率とは2方向の曲率の相加平均で定義されます.実は,体積固定の表面積の変分問題は,平均曲率一定曲面に対応しています.すなわち,平均曲率が一定(≠0)の曲面は,体積一定のまま表面積を最小にすることによって得られますが,球面はその自明な例です.また,平均曲率が恒等的に0である曲面は極小曲面と呼ばれ,これがプラトー問題の数学的な定式化でした.

 回転面で極小曲面は懸垂面(カテノイド)に限られたのですが,回転面で平均曲率一定曲面は球面とは限りません.このような曲面はドローネー曲面と呼ばれていますが,1841年,ドローネーは,平均曲率一定の回転面をすべて決定し,それが平面・円柱面・球面・懸垂面・アンデュロイド・ノドイドに分類されることを示しました.

 また,ホップの予想「球面がただひとつの閉じた平均曲率一定曲面である」は正しいと思われていたのですが,1984年,ヴェンテによって,球面とは異なる平均曲率一定曲面の反例が発見されたのを契機に,平均曲率一定曲面の研究は大きな進展をみせることとなりました.

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