■放物線・懸垂線・楕円曲線(その6)

【石けん膜と極小曲面】

 19世紀のベルギーの物理学者プラトーは,石けん膜に関する面白い実験結果を報告しました.その実験によれば,針金で輪をつくれば,それがどんな形の囲いであっても,必ず石けん膜が張られるというものです(1873年).

 

物理的には,石けん膜では表面張力によって表面積最小の曲面が実現します.もし,輪をひねって立体的な形にしたものを石けん液に浸して引き上げると,そこの複雑な形の曲面ができることになりますが,その場合でも針金の枠のなかでは最小の表面積をもった膜が実現し,こうして一定の枠のなかにできる最小面積の曲面の形が決定できるわけです.

 プラトーによって提起された問題は,いい換えれば,閉曲線を境界とする最小表面積の曲面を求める変分問題に他なりません.これに対する数学的な問題は,3次元ユークリッド空間の中に任意の閉曲線Cを与えたとき,Cを境界とする極小曲面は,どんな閉曲線に対しても存在するかどうかという問題となり,プラトー問題として知られるようになりました.プラトー問題の解は物理的には石けん膜として存在しますが,数学的には極小曲面の存在証明がなされたわけではないのです.

 極小曲面の存在と一意性を扱うこの問題は,1930〜1931年,アメリカの数学者ダグラスとハンガリーの数学者ラドーによって独立に解決されました.この業績により,ダグラスは1936年に第1回フィールズ賞を受賞しています.

 懸垂面は極小曲面(表面積最小曲面)の重要な例ですが,常螺旋面,エネッパー曲面,シェルク曲面など,極小曲面については非常に多くの例と結果が知られ

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