■分割数の性質(その24)

【2】重さ2の保型形式とラマヌジャン予想

 デデキントのイータ関数,

  η(z)=q^(1/24)Π(1-q^n),q=exp(2πiz)

において,関数

  F(z)=η(z)^2η(11z)^2

    =qΠ(1-q^n)^2(1-q^11n)^2=q-2q^2-q^3+2q^4+q^5+2q^6-2q^7+・・・

    =c(n)q^n,q=exp(2πiz)

を考えます.c(n)はF(z)のフーリエ係数です.

 F(z)は,

  ad-bc=1,c=0(mod 11)

なる任意の整数a,b,c,dに対して

  F(az+b/cz+d)=(cz+d)^2F(z)

を満たします.このとき,F(z)は重さ2の保型形式をもつといいます.

 また,F(z)のフーリエ係数c(n)を使って,ディリクレ級数

  φ(s)=Σc(n)/n^s

を定義します.ディリクレ級数はリーマンのゼータ関数

  ζ(s)=Σ1/n^s

を一般化したものです.

 ラマヌジャンは,このとき,

  L(s;E)=φ(s)

を予想しています.この予想は,1954年,アイヒラーが楕円曲線:y^2+y=x^3−x^2のゼータ関数と保型形式:F(z)=qΠ(1-q^n)^2(1-q^11n)^2のゼータ関数が,すべての素数に対して一致することを示すことによって解決されました(アイヒラー・井草).

 アイヒラーが示したラマヌジャン予想「解析的ゼータ=代数的ゼータ」は,ゼータの統一の先駆けであったのですが,これは谷山予想(谷山・志村・ヴェイユ予想)の特別な場合であって,「Q上の任意の楕円曲線のL級数は重さ2の保型形式のヘッケL級数に等しい」という谷山予想は最近ワイルズらによって解かれました.

 すなわち,ラマヌジャン予想・谷山予想は,ワイルズのフェルマー予想の証明(1995年)に至る大きなステップであって,20世紀の数論の原動力として重要な役割を果たしたといえるのです.また,オイラーの五角数定理は,左辺がイータ関数,右辺がテータ関数と呼ばれる保型形式の原型を与えていたので,19世紀には,

  デデキントのイータ関数=ヤコビのテータ関数

すなわち,保型形式の間の等式と捉えられるようになりました.

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