■概ピタゴラス数(その10)
【1】リュカの問題
n個の同じ大きさの正方形や円を重ならないように最小面積の正方形や円に詰め込む問題は実用価値があります.実生活でもカンやビンをいろいろな形の容器に詰め込む必要はよくありますが,大規模集積回路(VLSI)のチップ面積をできるだけ小さく設計する場合,モジュール部品をどのように配置したらよいのかなど現実的な要請があるからです.
しかし,正方形充填問題における最適な詰め込みかたは意外なことにnが平方数のときとnが2,3,5のごく小さい値のときだけしかわかっていません.たとえば,nが17から19までの場合の単位正方形をつめこむことができる最小の正方形を読者は発見できるでしょうか.この節では類似の問題として,辺が相続く整数列1,2,3,4,5,・・・の大きさの異なる正方形による正方形充填問題について考えてみることにします.
1^2+2^2+3^2+・・・+24^2=24(24+1)(2・24+1)/6=70^2</P>
は,最初の24個の平方数の合計が平方数になっているという面白い式です.驚異的ですらあります.
級数の公式:Σk^2=n(n+1)(2n+1)/6をご存じの方も多いでしょうが,1からnまでの平方の和が平方数となるのはnが1か24の場合しかありません.四面体数=四角数あるいは25平方の等式ともいうべきこの等式はリュカの問題(1873年)として知られています.
y^2=x(x+1)(2x+1)/6
の唯一自明でない整数解は(24,70)で,それ以外の自明な解がないことは楕円関数やペル方程式を使って証明されています.すなわち,1より大きい数でこれが起こるのは24だけで,それ以外の数では決して最初の2個の平方の和は平方数にはならないのです.
この等式は辺の長さが相続く整数列1,2,・・・,24の正方形を1辺の長さ70の正方形の中に詰め込める可能性があることを示唆しています.それでは,実際に,70×70の正方形を辺が1から24の相続く正方形によって埋めつくすことができるでしょうか.この問題の答えは否定的(不可能)です.1辺の長さ7の正方形を除くすべての正方形は詰め込めるのですが・・・.それならば,無駄な空間の割合を最小にして,辺の長さが1,2,・・・,nの正方形を全て詰め込むことができる最小の正方形の辺の長さはいくつでしょうか.また,相続く整数辺の正方形を使って長方形を充填できるでしょうか.
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