■元素の周期表・多面体の周期表(その4)
単純群は
(1)素数位数の巡回群
(2)5次以上の交代群
(3)リー型の単純群
(4)散在型単純群
の4種類に大別される.今日では有限単純群の分類は完成し,合計18の無限系列と26個の散在群に限ることがわかっている.
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【3】有限単純群の分類(4)
代数群などの分野からは発見され得ないし,古典群,交代群のように無限系列にはいっていないという意味で,散在型単純群と呼ばれる単純群が26個ある.一番小さいのが,11個の文字の上の置換群であるマシュー群M11(位数:7920),一番大きいものが,モンスター(位数:2^46・3^20・5^9・7^6・11^2・13^3・17・19・23・29・21・41・47・59・71)で,モンスターの位数はなんと54桁にものぼる.
26個の散在型単純群の歴史は,実に100年にわたっている.マシュー群と呼ばれている5種類の単純群M11,M12,M22,M23,M24が発見されたのは1860〜61年である.マシュー群の発見以後,100年あまりの空白期を経て,ヤンコが1965年6番目の散在型単純群J1(位数:175560)を発見する.
これを皮切りに,それから10年という短い間に有限単純群の残りの20個,鈴木群(イリノイ大学),原田群(オハイオ大学),コンウェイ群,フィッシャーのベビーモンスター群,モンスター群,・・・が次々と発見されてしまった.
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【4】有限単純群の分類(モンスターの発見)
マシューは5重可移性の置換群から,全部で5つの例外的な単純群M11,M12,M22,M23,M24をみつけた.ヴィットによるM24を構成するためのデザインを利用して,リーチは現在リーチ格子として知られる24次元におけるもっとも密度の高い配置を作った.リーチ格子では24次元球196560個の球と接触している.これが更なる単純群を生み出すことになった.
コンウェイはリーチ格子に好奇心をそそられ,リーチ格子の第1近接196560点は3つのグループ(97152+1104+98304)の3つに分けられるが,あるグループの点を他のグループの点に移す対称性から合計12個(5つのマシュー群,3つのコンウェイ群+残り4で計7個の新しい単純群)を発見した.
そして,美しい怪物は1973年イギリスのケンブリッジ大学で誕生し,コンウェイによりモンスターと命名・愛称された.モンスターを線形群の中に埋め込むとすると,最低でも196883次の行列GL(196883,R)が必要になる.すなわち,196883次元空間上の線形変換の集まりとして初めてモンスターを捉えることができる.
モンスターの発見と構成は26個の散在型単純群の中でも特異な位置を占めていて,26個の散在群のうち,20個がモンスターの部分群として現れるのである.
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