■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その89,杉岡幹生)

 L(1)8分割の分身の分解を調べます。

   L(1)=1/1 -1/3 +1/5 -1/7 +1/9 -1/11 +1/13 -1/15 +1/17 - ・・=π/4

 L(1)が分解していく全体の様子は次のようになっています。1個の分身に着目すると倍の2個に割れる(分解する)。今回は、その中の『L(1)8分割の分身⇒L(1)16分割の分身』の様子を見ます。

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L(1)⇒L(1)2分割の分身⇒L(1)4分割の分身⇒L(1)8分割の分身⇒L(1)16分割の分身⇒・・・

L(1)⇒L(1)3分割の分身⇒L(1)6分割の分身⇒L(1)12分割の分身⇒L(1)24分割の分身⇒・・・

L(1)⇒L(1)5分割の分身⇒L(1)10分割の分身⇒L(1)20分割の分身⇒L(1)40分割の分身⇒・・・

L(1)⇒L(1)7分割の分身⇒L(1)14分割の分身⇒L(1)28分割の分身⇒L(1)56分割の分身⇒・・・

・・・・・・・・・・・・・・

 このように、一つの分身が2つに(倍に)分解する。素数を起点として倍々ゲームで無限に分解(分岐)していく。

逆に無限の彼方から見れば、(先頭行を例にとると)・・・・⇒16分身⇒8分身⇒4分身⇒2分身⇒L(1)などとなっている。

  

 厳密には予想ですが、こんなふうになっている。

(注記)

 L(1)⇒L(1)4分割の分身⇒L(1)8分割の分身⇒L(1)16分割の分身⇒・・・

 L(1)⇒L(1)6分割の分身⇒L(1)12分割の分身⇒L(1)24分割の分身⇒・・・

なども当然成り立ちますが、略しました。理由は、前者は1行目の途中からに含まれており、後者は2行目に含まれていて、表示する必要がないからです(冗長になるので略)。すなわち、素数のケースだけ書けば十分です。

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 それでは、L(1)8分割の分身たちの分解の様子を見ることにします。8分割は(その14)での結果を利用します。16分割は、ここではじめて示します。

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   <8分割は(その14)の結果を抜粋>

■L(1)8分割

 C1= 1 -1/31 +1/33 -1/63 +1/65 -1/95 +・・ =(π/32)tan(15π/32)

 C2=1/3 -1/29 +1/35 -1/61 +1/67 -1/93 +・・ =(π/32)tan(13π/32)

 C3=1/5 -1/27 +1/37 -1/59 +1/69 -1/91 +・・ =(π/32)tan(11π/32)

 C4=1/7 -1/25 +1/39 -1/57 +1/71 -1/89 +・・ =(π/32)tan(9π/32)

 C5=1/9 -1/23 +1/41 -1/55 +1/73 -1/87 +・・ =(π/32)tan(7π/32)

 C6=1/11 -1/21 +1/43 -1/53 +1/75 -1/85 +・・=(π/32)tan(5π/32)

 C7=1/13 -1/19 +1/45 -1/51 +1/77 -1/83 +・・=(π/32)tan(3π/32)

 C8=1/15 -1/17 +1/47 -1/49 +1/79 -1/81 +・・=(π/32)tan(π/32)

    C1 -C2 +C3 -C4 +C5 -C6 +C7 -C8=π/4=L(1) となります。

■L(1)16分割

 D1= 1 -1/63 +1/65 -1/127 +1/129 -1/191 + ・・ =(π/64)tan(31π/64)

 D2=1/3 -1/61 +1/67 -1/125 +1/131 -1/189 +・・ =(π/64)tan(29π/64)

 D3=1/5 -1/59 +1/69 -1/123 +1/133 -1/187 +・・ =(π/64)tan(27π/64)

 D4=1/7 -1/57 +1/71 -1/121 +1/135 -1/185 +・・ =(π/64)tan(25π/64)

 D5=1/9 -1/55 +1/73 -1/119 +1/137 -1/183 +・・ =(π/64)tan(23π/64)

 D6=1/11 -1/53 +1/75 -1/117 +1/139 -1/181 +・・ =(π/64)tan(21π/64)

 D7=1/13 -1/51 +1/77 -1/115 +1/141 -1/179 +・・ =(π/64)tan(19π/64)

 D8=1/15 -1/49 +1/79 -1/113 +1/143 -1/177 +・・ =(π/64)tan(17π/64)

 D9=1/17 -1/47 +1/81 -1/111 +1/145 -1/175 +・・ =(π/64)tan(15π/64)

 D10=1/19 -1/45 +1/83 -1/109 +1/147 -1/173 +・・=(π/64)tan(13π/64)

 D11=1/21 -1/43 +1/85 -1/107 +1/149 -1/171 +・・=(π/64)tan(11π/64)

 D12=1/23 -1/41 +1/87 -1/105 +1/151 -1/169 +・・=(π/64)tan(9π/64)

 D13=1/25 -1/39 +1/89 -1/103 +1/153 -1/167 +・・=(π/64)tan(7π/64)

 D14=1/27 -1/37 +1/91 -1/101 +1/155 -1/165 +・・=(π/64)tan(5π/64)

 D15=1/29 -1/35 +1/93 -1/99 +1/157 -1/163 + ・・=(π/64)tan(3π/64)

 D16=1/31 -1/33 +1/95 -1/97 +1/159 -1/161 + ・・=(π/64)tan(π/64)

  D1 -D2 +D3 -D4 +D5 -D6 +D7 -D8 +D9 -D10 +D11 -D12 +D13 -D14 +D15 -D16=π/4=L(1) となります。

 念のためExcelマクロで上記全式の左辺の級数が右辺値に収束することを確認しました。D1〜D16の導出方法は、以下の通り。

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 L(1)16分割式の導出過程を簡単に述べます。次の部分分数展開式を使います。

 1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・ =(π/(4x))tan(πx/2)

 この式のxに次の値を代入することで、16分割の分割級数D1〜D16が求まります。

 xに値31/32を代入すると、D1が得られる。

 xに値29/32を代入すると、D2が得られる。

 xに値27/32を代入すると、D3が得られる。

 xに値25/32を代入すると、D4が得られる。

 xに値23/32を代入すると、D5が得られる。

 xに値21/32を代入すると、D6が得られる。

 xに値19/32を代入すると、D7が得られる。

 xに値17/32を代入すると、D8が得られる。

 xに値15/32を代入すると、D9が得られる。

 xに値13/32を代入すると、D10が得られる。

 xに値11/32を代入すると、D11が得られる。

 xに値 9/32を代入すると、D12が得られる。

 xに値 7/32を代入すると、D13が得られる。

 xに値 5/32を代入すると、D14が得られる。

 xに値 3/32を代入すると、D15が得られる。

 xに値 1/32を代入すると、D16が得られる。

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上記結果から、L(1)8分割の分身(C1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8)は、それぞれ2個に分裂(分解)して16分割の分身になっています。次の通りです。

  C1=D1 -D16  -----@

  C2=D2 -D15  -----A

  C3=D3 -D14  -----B

  C4=D4 -D13  -----C

  C5=D5 -D12  -----D

  C6=D6 -D11  -----E

  C7=D7 -D10  -----F

  C8=D8 -D9   -----G

 このように一つの分身が二つに割れるのです。その割れ方は(その81)で見たζ(2)8分割の場合と同じ形です(違いは右辺で足すか引くかの違いのみ)。綺麗な規則に従って分解していることに注目してください。

 級数での成立は簡単にわかります(眺めればわかる)。

 また右辺値での成立も(級数の成立から自明ではありますが)、次のようにすれば容易に確かめられる。

 三角関数において次式が成り立つ。

  tan(π/2 -2x)=(1/2){tan(π/2 -x)- tan(x)}

 xにπ/64、3π/64、5π/64、7π/64、9π/64、11π/64、13π/64、15π/64を代入することで、@〜Gの右辺値での成立を確かめることができます。

 以上より、L(1)分身の分岐構造全体のうち『L(1)8分割の分身⇒L(1)16分割の分身』の成立が確認できました。

以上。(杉岡幹生)

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