■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その86,杉岡幹生)

 ζ(s)の分身は、チェビシェフの多項式と関係しているようです。その辺を粗くスケッチします。

 チェビシェフの多項式は、次の”チェビシェフの微分方程式”の解です。

   (1-x^2)y´´ - xy´ + n^2・y=0 ----@  (n=0,1,2,3,・・)

 ζ(s)のζ(2)がこの微分方程式に関係しています。ζ(2)がなぜこんなものに関係するのか? それは次のような流れからそうなります。

 以前L(1)の分身たちを生み出す(解にもつ)方程式を次ページ辺りで求めました。その結果、「L(1)の分身の特殊値が代数方程式の解(根)として生み出される」ことがわかり、これで代数方程式という別の分野とゼータが結びつきました。

http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu2/12808_x7.htm

 それでは次に「ζ(2)の分身の値は、どんな代数方程式の解(根)となるのか?」が気になりました。求めると、次の方程式が得られました。

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ζ(2)1分割⇒ x -2=0

ζ(2)2分割⇒ x^2 -8x +8=0

ζ(2)3分割⇒ x^3 -18x^2 +48x -32=0

ζ(2)4分割⇒ x^4 -32x^3 +160x^2 -256x +128=0

ζ(2)5分割⇒ x^5 -50x^4 +400x^3 -1120x^2 +1280x -512=0

ζ(2)6分割⇒ x^6 -72x^5 +840x^4 -3584x^3 +6912x^2 -6144x +2048=0

 ・・・・・・

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 例えば、上のx^5・・の代数方程式を解けば、その5根(全て実根!)がそのままζ(2)5分割の分身の値になるという具合です。ζ(2)5分割の分身の姿はこちらで見ることができます。

http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu2/12448_n7.htm

さて、上式の係数が気になりました。

 L(1)分身を生む代数方程式は、パスカルの三角形の値を係数にもちました。それではζ(2)での上記の式は一体どんな式なのか?

 調べると、上記方程式に現れている左辺の多項式は、”チェビシェフの多項式”と本質的に等しいことがわかりました。自分の持つマグロウヒル公式集では、チェビシェフの多項式は大きく載っていて、次のチェビシェフの微分方程式の解を構成します。

  (1-x^2)y´´ - xy´ + n^2・y=0 ----@  (n=0,1,2,3,・・)

 例えば、n=8のときには、第一種チェビシェフ多項式Tn(x)におけるn=8での次のT8(x)を用いたy=T8(x)が@の微分方程式の解になります。

   T8(x)=128x^8 -256x^6 +160x^4 -32x^2 +1 ----A

 そして、このAの右辺は、上で掲載したζ(2)4分割での式、つまり次式の左辺と本質的に等しい!と気づきます。x^2=1/tとすれば簡単に確認できますね。

   x^4 -32x^3 +160x^2 -256x +128=0

 以上。このようなことがわかってきました。

 ゼータが微分方程式という異分野と関係してくるとは面白いことです。ゼータの分身たちの棲む洞窟は大きくて、いろんな水脈とつながっている感じです。まとめておきます。

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[まとめ]

ζ(2)の分身を生む次の代数方程式に現われている左辺の多項式f(x)は、チェビシェフの多項式と本質的に等しい。

 ζ(2)1分割⇒ x -2=0

 ζ(2)2分割⇒ x^2 -8x +8=0

 ζ(2)3分割⇒ x^3 -18x^2 +48x -32=0

 ζ(2)4分割⇒ x^4 -32x^3 +160x^2 -256x +128=0

 ζ(2)5分割⇒ x^5 -50x^4 +400x^3 -1120x^2 +1280x -512=0

 ζ(2)6分割⇒ x^6 -72x^5 +840x^4 -3584x^3 +6912x^2 -6144x +2048=0

  ・・・・・・

 それら多項式f(x)に対応したy=f(x)は、チェビシェフの微分方程式の一連の解である。ζ(s)は微分方程式と関係しているのである。

上記の代数方程式は解(根)は全て実根であり、その解はζ(2)の分身の値となる。

 例えば上の一つの”x^5 -50x^4 +400x^3 -1120x^2 +1280x -512=0”を解くと、五つの実根が得られ、それらはζ(2)5分割の分身たちの特殊値を与える。

ζ(2)5分割の分身の値はこちらを参照。

http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu2/12448_n7.htm

以上。(杉岡幹生)

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