■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その75,杉岡幹生)
今回は虚2次体Q(√-5)ゼータLC(s)のLC(1)の12分割を示します。
LC(s)はディリクレのL関数L(χ,s)
L(χ,s)=χ(1)/1^s +χ(2)/2^s +χ(3)/3^s +χ(4)/4^s +χ(5)/5^s +χ(6)/6^s +χ(7)/7^s +・・
の一種であり、次のものです。
LC(s)=1 +1/3^s +1/7^s +1/9^s -/11^s -1/13^s -1/17^s -1/19^s +・・
LC(s)は虚2次体Q(√-5)のゼータ関数で、導手N=20を持つ。ディリクレ指標χ(n)は、n≡1 or 3 or 7 or 9 mod 20のときχ(n)=1, n≡11 or 13 or 17 or 19 mod 20のときχ(n)=-1, その他のときχ(n)=0となる。
LC(1)は次の通りです。
LC(1)=1 +1/3 +1/7 +1/9 -/11 -1/13 -1/17 -1/19 +1/21 +1/23 +1/27 +1/29 -/31 -1/33 -1/37 -1/39 +・・・=π/√5 ------@
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それでは、LC(1)の12分割を示します。※を無視した残りの12個で12分割となります。次のようにL(1)15分割を利用しているため、あえて※を残しました。
■LC(1)12分割
B1= 1 -1/59 +1/61 -1/119 +1/121 -1/179 + ・・ =(π/60)tan(29π/60)
B2=1/3 -1/57 +1/63 -1/117 +1/123 -1/177 +・・ =(π/60)tan(27π/60)
※B3=1/5 -1/55 +1/65 -1/115 +1/125 -1/175 +・・ =(π/60)tan(25π/60) ⇒無視
B4=1/7 -1/53 +1/67 -1/113 +1/127 -1/173 +・・ =(π/60)tan(23π/60)
B5=1/9 -1/51 +1/69 -1/111 +1/129 -1/171 +・・ =(π/60)tan(21π/60)
B6=1/11 -1/49 +1/71 -1/109 +1/131 -1/169 +・・ =(π/60)tan(19π/60)
B7=1/13 -1/47 +1/73 -1/107 +1/133 -1/167 +・・ =(π/60)tan(17π/60)
※B8=1/15 -1/45 +1/75 -1/105 +1/135 -1/165 +・・ =(π/60)tan(15π/60) ⇒無視
B9=1/17 -1/43 +1/77 -1/103 +1/137 -1/163 +・・ =(π/60)tan(13π/60)
B10=1/19 -1/41 +1/79 -1/101 +1/139 -1/161 +・・ =(π/60)tan(11π/60)
B11=1/21 -1/39 +1/81 -1/99 +1/141 -1/159 + ・・ =(π/60)tan(9π/60)
B12=1/23 -1/37 +1/83 -1/97 +1/143 -1/157 + ・・ =(π/60)tan(7π/60)
※B13=1/25 -1/35 +1/85 -1/95 +1/145 -1/155 + ・・ =(π/60)tan(5π/60) ⇒無視
B14=1/27 -1/33 +1/87 -1/93 +1/147 -1/153 + ・・ =(π/60)tan(3π/60)
B15=1/29 -1/31 +1/89 -1/91 +1/149 -1/151 + ・・ =(π/60)tan(π/60)
B1 +B2 +B4 +B5 -B6 -B7 -B9 -B10 +B11 +B12 +B14 +B15=LC(1) となります。上記全式に対しExcelマクロで数値検証しましたが、全て左辺の級数は右辺値に一致しました。
上記B1〜B15はL(1)15分割の分身たちであり、B1 -B2 +B3 -B4 +B5 -B6 +B7 -B8 +B9 -B10 +B11 -B12 +B13 -B14 +B15=L(1)=π/4となります。美しい秩序から成り立っています。
L(1)15分割はここではじめて示しました。
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上の分割級数の導出過程を簡単に述べます。次のタンジェントの部分分数展開式を使います。
1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・ =(π/(4x))tan(πx/2)
このxに次の値を代入することで、分割された級数とその値が求まります。
xに29/30を代入すると、B1が得られる。
xに27/30を代入すると、B2が得られる。
xに25/30を代入すると、B3が得られる。 ⇒ 無視。25/30=5/6代入であり、L(1)3分割の分身の一つと一致
xに23/30を代入すると、B4が得られる。
xに21/30を代入すると、B5が得られる。
xに19/30を代入すると、B6が得られる。
xに17/30を代入すると、B7が得られる。
xに15/30を代入すると、B8が得られる。 ⇒無視。15/30=1/2代入であり、L(1)1分割と一致
xに13/30を代入すると、B9が得られる。
xに11/30を代入すると、B10が得られる。
xに 9/30を代入すると、B11が得られる。
xに 7/30を代入すると、B12が得られる。
xに 5/30を代入すると、B13が得られる。 ⇒無視。5/30=1/6代入であり、L(1)3分割の分身の一つと一致
xに 3/30を代入すると、B14が得られる。
xに 1/30を代入すると、B15が得られる。
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このようにLC(1)の12分割が求まりました。上で言及したようにLC(1)の分身たちは、L(1)15分割の分身たちの内の12個から成ります。
LC(1)は、L(1)のパーツB1〜B15のうちB1,B2,B4,B5,B6,B7,B9,B10,B11,B12,B14,B15から作られている。まとめて書くと、次となります。
L(1)= B1 -B2 +B3 -B4 +B5 -B6 +B7 -B8 +B9 -B10 +B11 -B12 +B13 -B14 +B15
LC(1)=B1 +B2 +B4 +B5 -B6 -B7 -B9 -B10 +B11 +B12 +B14 +B15
このようにLC(1)の分身たちは、L(1)の分身たち(の一部)から成っていることがわかりました。
これまでの結果を以下に更新しておきます。下表の通りです。ただし新たに(注記)を加えました。
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ζ(s) リーマンゼータ、導手N=1 ⇒ n分割可能である。
L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4 ⇒ n分割可能である。
LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3 ⇒ 1〜10分割可能である。n分割可能と考えられる(予想)。
LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5 ⇒ 2/4/6/8/10/12分割が可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。
LP(s) 虚2次体Q(√-7)ゼータ、導手N=7 ⇒ 3/6/9/12分割可能である。3n分割可能と考えられる(予想)。3n分割が最良か(問題)。
L2(s) 虚2次体Q(√-2)ゼータ、導手N=8 ⇒ 2/4/6/8/10/12分割可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。
L1(s) 実2次体Q(√2)ゼータ、 導手N=8 ⇒ 2/4/6/8/10/12分割可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。
LE(s) 虚2次体Q(√-6)ゼータ、導手N=24 ⇒ 4/8/12分割可能である。4n分割可能と考えられる(予想)。4n分割が最良か(問題)。
LC(s) 虚2次体Q(√-5)ゼータ、導手N=20 ⇒ 4/8分/12割可能である。4n分割可能と考えられる(予想)。4n分割が最良か(問題)。
ここで、nは1以上の整数。
(注記)上記分割はタンジェント部分分数展開式のxにq/pを、pを固定し1<=q<pの範囲でqを変化させる形で次々に代入した場合の分割を対象とする。(pは1以上の整数、qは1以上の奇数)
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