■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その71,杉岡幹生)
< 分身は分割可能か? 分身は原子的か?>
まずこれまで調べてきたL(χ,s)の分割の結果を示します。次の通りです。
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ζ(s) リーマンゼータ、導手N=1 ⇒ n分割可能である。
L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4 ⇒ n分割可能である。
LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3 ⇒ 1〜10分割可能である。n分割可能と考えられる(予想)。
LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5 ⇒ 2/4/6/8/10/12分割が可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。
LP(s) 虚2次体Q(√-7)ゼータ、導手N=7 ⇒ 3/6/9/12分割可能である。3n分割可能と考えられる(予想)。3n分割が最良か(問題)。
L2(s) 虚2次体Q(√-2)ゼータ、導手N=8 ⇒ 2/4/6/8/10/12分割可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。
L1(s) 実2次体Q(√2)ゼータ、 導手N=8 ⇒ 2/4/6/8/10/12分割可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。
LE(s) 虚2次体Q(√-6)ゼータ、導手N=24 ⇒ 4/8/12分割可能である。4n分割可能と考えられる(予想)。4n分割が最良か(問題)。
LB(s) 実2次体Q(√3)ゼータ、 導手N=12 ⇒ 4分割可能である。
注記:nは1以上の整数
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この結果を眺めているうちに、以下に示す亜流的な分割も含めれば、L(χ,s)の全ての2次体ゼータは、n分割可能のような気がしてきました。今回はそのことをまず議論し、そして分身の分割を考えてみます。
http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu2/12898_d7.htm -----@
例を用いて、説明していきます。上記URLの(その54)で示した虚2次体Q(√-2)ゼータL2(s)ゼータのL2(1)は、次のものです。
L2(1)=1 +1/3 -1/5 -1/7 +1/9 +1/11 -/13 -1/15 +1/17 +1/19 -1/21 -1/23 +・・=π√2/4
(その54)や(その55)では、このL2(1)は2分割、4分割、6分割、・・と2n分割可能であることを見ました。
さて、L2(1)の2分割は上記サイトで見た通り、次のようになります。
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■L2(1)2分割
A1= 1 -1/7 +1/9 -1/15 +1/17 -1/23 +・・ =(π/8)tan(3π/8)
A2= 1/3 -1/5 +1/11 -1/13 +1/19 -1/21 +・・ =(π/8)tan(π/8)
A1 +A2=L2(1)=π√2/4 となります。 ここで、tan(3π/8)=√2 +1,tan(π/8)=√2 -1
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L2(1)は何分割可能か?に関して、2分割スタートだから”2×n”で2n分割可能が言え(厳密には予想)、そして「2n分割が最良か」と問いました。
そして、4分割は次のようになります。これも(その54)で見たものです。
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■L2(1)4分割
A1= 1 -1/15 +1/17 -1/31 +1/33 -1/47 +・・ =(π/16)tan(7π/16)
A2= 1/3 -1/13 +1/19 -1/29 +1/35 -1/45 +・・ =(π/16)tan(5π/16)
A3= 1/5 -1/11 +1/21 -1/27 +1/37 -1/43 +・・ =(π/16)tan(3π/16)
A4= 1/7 -1/9 +1/23 -1/25 +1/39 -1/41 +・・ =(π/16)tan(π/16)
A1 +A2 -A3 -A4=L2(1)=π√2/4 となります。なお、tan()を計算した結果は以下の通り。
tan(7π/16)= 1 +√2 +√(4+2√2)
tan(5π/16)=-1 +√2 +√(4-2√2)
tan(3π/16)= 1 -√2 +√(4-2√2)
tan(π/16)= -1 -√2 +√(4+2√2)
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さて、ここでよく考えてみると「A1 +A2」と「-A3」と「-A4」という三つの分身を構成すれば、それで「3分割ができた」ことになります。ちょっといま一つの3分割ですが、次のURLの(その65)で示した「分割の条件」には合致しているので一応「3分割ができた!」といえます。(他の組み合わせでの3分割、また2分割もできますが)
http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu2/13065_r4.htm
「A1 +A2」は亜分身ともいえるようなものです。なぜなら、明示的な特殊値をもった形で(ここが重要)「A1」と「A2」に簡単に分かれるから!よって一流ではない!?
さらに(その55)の6分割からでも、上記と類似の方法で5分割を構成できます(4、3、2分割も構成可能)。
さらに(その55)の8分割からでも、上記と類似の方法で7分割を構成できます(6、5、4、3、2分割も構成可能)。
そして10分割、12分割・・と同様の考えを適用していくことで、2以上の任意の整数nに対して、「L2(1)はn分割可能である」となります。
このような、すこし面白くない”亜流的分割”(亜分割と呼びましょう)を含めればこういうことになってしまいます。
こんなふうに考えてくると「これはもうこれ以上絶対に分割されない分身だ!」という分身が存在すればそれが”一番りっぱな分身”であると言えます(一流の分身?)。
そういう分身を”原子分身”と呼ぶことにしましょう。
さて、上記L2(1)2分割や4分割の分身たちは、はたして原子分身なのでしょうか?この分身たちはこれ以上分割されないのでしょうか?
あるいは、分身は分割され、孫分身を産み、さらにその孫がひ孫分身を産み・・と無間地獄と続く階段が用意されているのか? (孫やひ孫がある場合、その特殊値が明示的に求まることが条件)。原子分身というものはどこまでいっても存在しないのでしょうか。
これは興味ある問題です。
この問いを、2次体ゼータ全体に適用して次の問題ができました。
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[問題]
L(χ,s)ゼータ(ζ(s)も含む)から分かれた分身(分割級数)は、分割可能か?
ただし、まずは明示的な特殊値をもつ場合に限定した問題とする。
はたしてL2(1)4分割の分身A1,A2,A3,A4は、もっと分割できるのか?
■L2(1)4分割
A1= 1 -1/15 +1/17 -1/31 +1/33 -1/47 +・・ =(π/16)tan(7π/16)
A2= 1/3 -1/13 +1/19 -1/29 +1/35 -1/45 +・・ =(π/16)tan(5π/16)
A3= 1/5 -1/11 +1/21 -1/27 +1/37 -1/43 +・・ =(π/16)tan(3π/16)
A4= 1/7 -1/9 +1/23 -1/25 +1/39 -1/41 +・・ =(π/16)tan(π/16)
A1 +A2 -A3 -A4=L2(1)=π√2/4 となる。
注記:これらはL(1)の分身たちでもある。A1 -A2 +A3 -A4=L(1)=π/4である。⇒(その14)http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu2/12043_z2.htm
さらに例えば、次のZ(2)分割(つまりζ(2)2分割)の分身B1,B2は、さらに細かく分割できるのか?
参照(その15)ttp://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu2/12091_dx.htm
■Z(2)2分割
B1= 1 + 1/7^2 +1/9^2 +1/15^2 + 1/17^2 +1/23^2 +・・ =(π/8)^2 /{cos(3π/8)}^2
B2=1/3^2 +1/5^2 +1/11^2 +1/13^2 + 1/19^2 +1/21^2 +・・ =(π/8)^2 /{cos(π/8)}^2
B1 +B2=1 +1/3^2 +1/5^2 +1/7^2 +1/9^2 +1/11^2 +・・=Z(2)=(3/4)ζ(2)=π^2/8である。
1/{cos()}^2の部分を計算した結果は、以下の通り。
1/{cos(3π/8)}^2= 4 +2√2 、1/{cos(π/8)}^2 = 4 -2√2
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これまではゼータ関数の分割を問題にしてきましたが、ここでは分割されてできた分身の分割を問題にしています。
答えがYesかNoかで、まったく違った世界が開けます。読者で、解けたよ!という場合はぜひお知らせください。[sugioka_m@mvb.biglobe.ne.jp]
以上。(杉岡幹生)
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