■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その66,杉岡幹生)

 今回から新しく虚2次体Q(√-6)ゼータLE(s)の分割を調べていきます。私の方では12分割まで計算が終わっているのですが、LE(s)の最終結論から先に述べておきます。

 LE(s)は4n分割可能となります(厳密には予想)。LE(s)では4分割からスタートするため、”4分割×n”で4n分割(4分割、8分割、12分割・・)が可能となります。今回は4分割を示します。

 さて、LE(s)はディリクレのL関数L(χ,s)

  L(χ,s)=χ(1)/1^s +χ(2)/2^s +χ(3)/3^s +χ(4)/4^s +χ(5)/5^s +χ(6)/6^s +χ(7)/7^s +・・

 の一種であり、次のものです。

  LE(s)=1 +1/5^s +1/7^s +1/11^s -/13^s -1/17^s -1/19^s -1/23^s +・・

 LE(s)は虚2次体Q(√-6)のゼータ関数で、導手N=24を持つ。

 ディリクレ指標χ(n)は、n≡1 or 5 or 7 or 11 mod 24のときχ(n)=1, n≡13 or 17 or 19 or 23 mod 24のときχ(n)=-1, その他のときχ(n)=0となる。

 よってs=1のLE(1)は次となる。右辺値は虚2次体の類数公式からわかります。

 LE(1)=1 +1/5 +1/7 +1/11 -/13 -1/17 -1/19 -1/23 +1/25 +1/29 +1/31 +1/35 -/37 -1/41 -1/43 -1/47 +・・・=π/√6 ------@

 これまでと同様に、明示的に求まる場合のLE(1),LE(3),LE(5)・・のうち、LE(1)を代表選手として考察していきます(それで十分。LE(3)、LE(5)・・も同様の結論になる)。

 

 なお”LE(s)”という表記は私が便宜的に用いているもので、一般的なものではないので注意してください。

===================================

 それでは、LE(1)の4分割を示します。※は無視して残りの4つで4分割となります。次のようにL(1)6分割を利用しているため、あえて※を残しました。

■LE(1)4分割

 A1= 1 -1/23 +1/25 -1/47 +1/49 -1/71 +・・ =(π/24)tan(11π/24)

※A2=1/3 -1/21 +1/27 -1/45 +1/51 -1/69 +・・=(π/24)tan(9π/24) ⇒無視

 A3=1/5 -1/19 +1/29 -1/43 +1/53 -1/67 +・・=(π/24)tan(7π/24)

 A4=1/7 -1/17 +1/31 -1/41 +1/55 -1/65 +・・ =(π/24)tan(5π/24)

※A5=1/9 -1/15 +1/33 -1/39 +1/57 -1/63 +・・ =(π/24)tan(3π/24) ⇒無視

 A6=1/11 -1/13 +1/35 -1/37 +1/59 -1/61 +・・ =(π/24)tan(π/24)

  A1 +A3 +A4 +A6=LE(1)となります。上記式に対しExcelマクロで数値検証しましたが、全て左辺の級数は右辺値に一致しました。

 上記A1〜A6はL(1)6分割の分身たちです。L(1)6分割は(その21)で見ましたが、A1 -A2 +A3 -A4 +A5 -A6=L(1)となります。

===================================

 上の分割級数の導出過程を簡単に述べます。次のタンジェントの部分分数展開式を使います。

 1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・ =(π/(4x))tan(πx/2)

 このxに次の値を代入することで、分割された級数とその値が求まります。

xに11/12を代入すると、A1が得られる。

xに 9/12を代入すると、A2が得られる。 ⇒無視 9/12=3/4でありL(1)2分割のA1と同じ。

xに 7/12を代入すると、A3が得られる。

xに 5/12を代入すると、A4が得られる。

xに 3/12を代入すると、A5が得られる。 ⇒無視 3/12=1/4でありL(1)2分割のA2と同じ。

xに 1/12を代入すると、A6が得られる。

===================================

 このようにLE(1)の4分割が求まりました。上で言及したようにLE(1)の分身たちは、L(1)の6分割の分身たちの4つと同じです。

 

 LE(1)は、L(1)のパーツA1,A2,A3,A4,A5,A6のうちA1,A3,A4,A6から作られています。まとめて書くと、次のようになります。

  L(1)= A1 -A2 +A3 -A4 +A5 -A6

  LE(1)=A1 +A3 +A4 +A6

 さらに@よりLE(1)=π/√6 ですから、LE(1)4分割の右辺のtan()に着目すると、次式が成り立ちます。 

  (π/24){tan(11π/24) +tan(7π/24) +tan(5π/24) +tan(π/24)}=π/√6

 面白いですね。これまでの結果を更新しておきます。

===================================

 ζ(s) リーマンゼータ、導手N=1       ⇒ n分割可能である。

  L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4    ⇒ n分割可能である。

  LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3   ⇒ 1〜10分割可能である。n分割可能と考えられる(予想)。

  LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割が可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  LP(s) 虚2次体Q(√-7)ゼータ、導手N=7   ⇒ 3/6/9/12分割可能である。3n分割可能と考えられる(予想)。3n分割が最良か(問題)。

  L2(s) 虚2次体Q(√-2)ゼータ、導手N=8   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  L1(s) 実2次体Q(√2)ゼータ、 導手N=8   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  LE(s) 虚2次体Q(√-6)ゼータ、導手N=24   ⇒ 4分割可能である。

注記:nは1以上の整数  以上。(杉岡幹生)

===================================