■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その64,杉岡幹生)

 今回は、L1(2)の12分割を示します。

 L1(s)は実2次体Q(√2)のゼータ関数で、導手N=8を持ちます。

 ディリクレ指標χ(n)は次の通り。n≡1 or 7 mod 8のときχ(n)=1, n≡3 or 5 mod 8のときχ(n)=-1, その他のときχ(n)=0となる。s=2のL1(2)は次となります。

 L1(2)=1 -1/3^2 -1/5^2 +1/7^2 +1/9^2 -1/11^2 -/13^2 +1/15^2 +1/17^2 -1/19^2 -1/21^2 +1/23^2 +・・=(√2/16)π^2

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 それでは、L1(2)の12分割を示します。

■L1(2)12分割

 A1 = 1 +1/47^2 +1/49^2 +1/95^2 +1/97^2 +1/143^2 + ・・  =(π/48)^2/{cos(23π/48)}^2

 A2 =1/3^2 +1/45^2 +1/51^2 +1/93^2 +1/99^2 +1/141^2 + ・・=(π/48)^2/{cos(21π/48)}^2

 A3 =1/5^2 +1/43^2 +1/53^2 +1/91^2 +1/101^2 +1/139^2 + ・・=(π/48)^2/{cos(19π/48)}^2

 A4 =1/7^2 +1/41^2 +1/55^2 +1/89^2 +1/103^2 +1/137^2 + ・・=(π/48)^2/{cos(17π/48)}^2

 A5 =1/9^2 +1/39^2 +1/57^2 +1/87^2 +1/105^2 +1/135^2 + ・・=(π/48)^2/{cos(15π/48)}^2

 A6 =1/11^2 +1/37^2 +1/59^2 +1/85^2 +1/107^2 +1/133^2 + ・・=(π/48)^2/{cos(13π/48)}^2

 A7 =1/13^2 +1/35^2 +1/61^2 +1/83^2 +1/109^2 +1/131^2 + ・・=(π/48)^2/{cos(11π/48)}^2

 A8 =1/15^2 +1/33^2 +1/63^2 +1/81^2 +1/111^2 +1/129^2 + ・・=(π/48)^2/{cos(9π/48)}^2

 A9 =1/17^2 +1/31^2 +1/65^2 +1/79^2 +1/113^2 +1/127^2 + ・・=(π/48)^2/{cos(7π/48)}^2

 A10 =1/19^2 +1/29^2 +1/67^2 +1/77^2 +1/115^2 +1/125^2 + ・・=(π/48)^2/{cos(5π/48)}^2

 A11 =1/21^2 +1/27^2 +1/69^2 +1/75^2 +1/117^2 +1/123^2 + ・・=(π/48)^2/{cos(3π/48)}^2

 A12 =1/23^2 +1/25^2 +1/71^2 +1/73^2 +1/119^2 +1/121^2 + ・・=(π/48)^2/{cos(π/48)}^2

 A1 -A2 -A3 +A4 +A5 -A6 -A7 +A8 +A9 -A10 -A11 +A12=L1(2)=(√2/16)π^2となります。A1〜A12式に対しExcelマクロで数値検証しましたが、全て左辺の級数は右辺値に収束しました。

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 上の分割級数の導出過程を簡単に述べます。タンジェントの部分分数展開式は、次の通りです。

  1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・=(π/(4x))tan(πx/2)

 これを1回微分して得られる次の@式を使います。

  1/(1^2-x^2)^2 +1/(3^2-x^2)^2 +1/(5^2-x^2)^2 +・・=(π/(4x))^2/{cos(πx/2)}^2 + Others(x) ---@

 ここで右辺のOthers(x)は、Others(x)=-{π/(8x^3)}tan(πx/2)ですが、無視してよい個所なのでOthers(x)としました。

 @のxに特定の値を代入することで、次のようにL1(2)の分割級数が求まっていきます。

 @のxに値23/24を代入すると、A1が得られる。

 @のxに値21/24を代入すると、A2が得られる。

 @のxに値19/24を代入すると、A3が得られる。

 @のxに値17/24を代入すると、A4が得られる。

 @のxに値15/24を代入すると、A5が得られる。

 @のxに値13/24を代入すると、A6が得られる。

 @のxに値11/24を代入すると、A7が得られる。

 @のxに値 9/24を代入すると、A8が得られる。

 @のxに値 7/24を代入すると、A9が得られる。

 @のxに値 5/24を代入すると、A10が得られる。

 @のxに値 3/24を代入すると、A11が得られる。

 @のxに値 1/24を代入すると、A12が得られる。

注記:左辺はL1(2)分割級数だけを拾い、右辺はそれに対応する(π/(4x))^2/{cos(πx/2)}^2の値だけを拾います(すなわち、左辺ではL1(2)分割級数以外の級数を無視し、右辺ではOthers(x)の値は無視します。それでOK)。

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 このようにL1(2)の12分割が求まりました。

 L1(2)の分身たちは、じつはζ(2)の12分割の分身たちと同じです。ζ(2)つまりZ(2)の12分割は下記<付録1>で示したので見てください。L1(2)は、Z(2)と全く同じパーツ(分身)から作られていることがわかります。

 違いは、パーツの組み合わせ方(加減の演算)の違いだけです。

  Z(2) =A1 +A2 +A3 +A4 +A5 +A6 +A7 +A8 +A9 +A10 +A11 +A12

  L1(2)=A1 -A2 -A3 +A4 +A5 -A6 -A7 +A8 +A9 -A10 -A11 +A12

このようにL1(2)は、Z(2)と同じ部品からできているのです! 面白いことですよね。

 今回の12分割で、L1(2)は終了とします。これまで見てきたように、L1(2)は2n分割可能と考えられます(nは1以上の整数)。はたしてL1(2)は”2n分割”が最良なのでしょうか。

 これまでの結果を更新しておきます。

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 ζ(s) リーマンゼータ、導手N=1       ⇒ n分割可能である。

  L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4    ⇒ n分割可能である。

  LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3   ⇒ 1〜10分割可能である。n分割可能と考えられる(予想)。

  LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割が可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  LP(s) 虚2次体Q(√-7)ゼータ、導手N=7   ⇒ 3/6/9/12分割可能である。3n分割可能と考えられる(予想)。3n分割が最良か(問題)。

  L2(s) 虚2次体Q(√-2)ゼータ、導手N=8   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  L1(s) 実2次体Q(√2)ゼータ、 導手N=8   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

 注記:nは1以上の整数  以上。(杉岡幹生)

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