■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その62,杉岡幹生)

 <ゼータ分割に関する種々の予想 ver 2.5>

 (その44)でゼータ分割の予想&問題を改良しましたが(ver2.0)、その後進展があり、新たな問題も加えたり削除したものもあるためここにバージョンアッ版を提示します。ver2.0⇒ver 2.5として改訂。

 ※をつけたものは新たに加えたものです。最後の<つぶやき、結果>に解けたものや、独断と偏見の意見を書きました。

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[1]ゼータの分割は、ζ(s)を含むL(χ,s)の1次のゼータのみならず、2次以上のn次ゼータでも実現されるのではないか。例えば、2次の保型形式ゼータ(楕円曲線ゼータ)も分割できるのではなかろうか。

[2] 関数等式など

(1)それぞれの分身たちに対し、関数等式は存在するか。

(2)テイラーシステム(12年前開発)を使って、分身たち(分割級数)の特殊値を導出せよ。

(3)分身たち(分割級数)でリーマン予想は成り立つか。

※[3] 代数方程式との関係

 (1)(その52)等で、L(1)の分身の値(π以外のtan()部分)を解に持つ方程式は、パスカルの三角形(二項係数)を係数にもつ代数方程式とわかった(±符号規則も発見)。

    ここでゼータ分割と代数方程式が結びついた。分身の値の考察から、任意にn分割された分身はすべて「πと有限個の根号√の組み合わせで表現できる」ような気がする。

    そのことをガロア理論(可解群)と関連づけて説明せよ。

     L(1)4分割の例をあげておく。次のようにL(1)の分身たちは”π×(有限個の根号√を含む式)”で表現できる。 

   ■L(1)4分割

    A1= 1 -1/15 +1/17 -1/31 +1/33 -1/47 +・・ =(π/16)tan(7π/16)

    A2=1/3 -1/13 +1/19 -1/29 +1/35 -1/45 +・・=(π/16)tan(5π/16)

    A3=1/5 -1/11 +1/21 -1/27 +1/37 -1/43 +・・=(π/16)tan(3π/16)

    A4=1/7 -1/9 +1/23 -1/25 +1/39 -1/41 +・・ =(π/16)tan(π/16)

    

     ここで、A1 -A2 +A3 -A4=L(1)=π/4です。右辺のtan()は以下の通り。

    tan(7π/16)=1 +√2 +√(4+2√2)、

    tan(5π/16)=-1 +√2 +√(4-2√2) 、

    tan(3π/16)=1 -√2 +√(4-2√2)、

    tan(π/16)=-1 -√2 +√(4+2√2)

 (2)上記をL(3),L(5)・・やζ(s)のケースに拡張せよ。さらにL(χ,s)全部に拡張せよ。

[4] 非明示特殊値での分割

  非明示の特殊値をもつζ(3)、ζ(5)、ζ(7)・・やL(2)、L(4)、L(6)・・・も分割できるのではないか。非明示のL(χ,s)はどうか。

[5]岩澤理論、クンマーの理論、イデアル類群との関連

※(1)例えば、ζ(12)の特殊値”691π^2/638512875”について、分子に突然691という素数が出現する理由をクンマーの理論や岩澤理論とは別視点から説明せよ。

   ζ(12)分割級数の生成核関数を使えば、691が出現する理由がわかるのではないか。

※(2)類数(イデアル類群の位数)と分割級数(ゼータの分身たち)を結びつけよ。例えば(その56)で見た「虚2次体Q(√-2)ゼータL2(1)の分身たち」と「虚2次体Q(√-2)の類数h」との次の興味深い関係式をさらに深めよ(一般化せよ)。

   ■虚2次体Q(√-2)の類数h(h=1)とL2(1)6分割と8分割との間に成り立つ関係式。

   [6分割の場合]

    h=(1/(6√2)){tan(11π/24) +tan(9π/24) -tan(7π/24) -tan(5π/24) +tan(3π/24) +tan(π/24)}

   [8分割の場合]

    h=(1/(8√2)){tan(15π/32) +tan(13π/32) -tan(11π/32) -tan(9π/32) +tan(7π/32) +tan(5π/32) -tan(3π/32) -tan(π/32)}

    右辺を計算すると、どちらもh=1となる。

   すなわち、ここでのテーマは、

  2次体の類数(代数的な量)=L(χ,s)ゼータの値(解析的な量)

という関係性を、類数公式や岩澤理論とは違う方向から別種の形で打ち立てよ、ということ。

[6](その18)〜(その20)で提示した次の予想は解けないか? 「分子係数和=分母係数予想」と名付ける。

 <分子係数和=分母係数予想>

『ζ(2n)、L(2n-1)を分割した結果に関し、分子のsin式におけるsin項の係数の和(定数項も含む)と、分母cosにかかる係数は一致するだろう。nは1以上の整数。』

 例えば、(その20)で見たZ(10)2分割の分身の一つA1では、次のように成り立つ。(分身A2でも成立⇒(その20))

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 Z(10)のA1の値は次の通り。

 A1=α^10 {62+1072(sβ)^2+1452(sβ)^4+247(sβ)^6+2(sβ)^8}/{2835(cβ)^10}

 分子のsin係数の和=62+1072+1452+247+2=2835、 分母のcos係数=2835

 よって、予想は成り立っている。

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 注記1:α=π/8, β=3π/8であり、sinは”s”, cosは”c”と略記している。

 注記2:Z(10)=1 +1/3^10 +1/5^10 +1/7^10 +1/9^10 +・・=(1-1/2^10)ζ(10)であり、Z(10)はζ(10)と本質的に同じである。

[7](その25)〜(その26)で提示した「奇数出現位置予想」は解けないか。

 <奇数出現位置予想>

『分割されたζ(m)、L(m)の特殊値の分子において、奇数は一度だけ出現する。さらに次の関係を満たすサイン位置pに奇数が出現する。奇数が掛かるサインsinの指数の値をpとすると、

   m + p=2^n

  ただし、分母と分子は最大限約分されているとする。ここでmは、ζ(m)では2以上の偶数、L(m)では1以上の奇数。nは1以上の整数。』

 例えば、Z(10)2分割の分身A1では、次のように成り立っている。(分身A2でも成立⇒(その20))

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 A1= α^10 {62+1072(sβ)^2+1452(sβ)^4+247(sβ)^6+2(sβ)^8}/{2835(cβ)^10}

 Z(10)を見ているので、m=10である。分子には247という奇数が一度だけ出現している。247が掛かるサインsβは(sβ)^6であるからp=6である。

  10 + 6=2^4

 よって、予想は成り立っている。

注記:α=π/8, β=3π/8であり、sinは”s”, cosは”c”と略記。

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[8]ゼータの分割は、一意に実現されることを証明せよ。例えば、ゼータを12分割したとき、「二通りの真の12分割が実現される」などとというようなことが無いことを示せ。

※[9] 「ゼータは何分割可能か」を分類せよ。現時点まででわかった結果は以下の通り。

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 リーマンゼータζ(s)、 導手N=1       ⇒ n分割可能である。

  L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4    ⇒ n分割可能である。

  LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3   ⇒ 1〜10分割可能である。n分割可能と考えられる(予想)。

  LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割が可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  LP(s) 虚2次体Q(√-7)ゼータ、導手N=7   ⇒ 3/6/9/12分割可能である。3n分割可能と考えられる(予想)。3n分割が最良か(問題)。

  L2(s) 虚2次体Q(√-2)ゼータ、導手N=8   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  L1(s) 実2次体Q(√2)ゼータ、 導手N=8   ⇒ 2/4/6/8分割可能である。

 注記:nは1以上の整数

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< つぶやき、結果 >

[1] これは壮大なテーマである。2次のゼータでも現代数学ではわからないことだらけ。一般のn次ゼータの分割など夢のまた夢。

[2]

(1)テイラーシステムでちょっと計算したところ、分割ゼータ(分割級数)の関数等式は存在するような気がする。

   注記:テイラーシステムは、ζ(s)やL(s)の”任意の実数点”の特殊値が簡単に導出できる超強力マシーン。

(2)分割ゼータの関数等式がわかればできるんだろうが、むずかしい。いったん休止。

(3)解決。分割級数(分身)ではリーマン予想は不成立。数値計算でわかった。しかし分身たちとリーマン予想は若干関係がある。分割の手法がリーマン予想の攻略に使えるかも。

[3] 分割が代数方程式という別水脈とつながった。重要な方向なのだが、ガロア理論に疎いので、進行は遅くなる。ゆっくりやりたい。

[4] 非明示L(2)の2分割に成功!!(その48)で報告。しかし明示的な場合と違って、非明示は計算が非常にたいへん。だからまだこの一つだけ。

[5]

(1)ゼータの分割は、ある意味で岩澤理論とは別方向からゼータ特殊値のふしぎを解明する理論であると思う。

(3)円分体やイデアル類群とゼータの分身たちは関係しているはず。その関係をつかみたい。

[6]と[7]はどっちが難しいか?

  独断と偏見で[6]の方が難しい。[7]はがんばれば数か月で解けるはず。[6]の<分子係数和=分母係数予想>は、何年もかかるだろう。

[8] 一意に決まっているのだが・・。

[9]ちょっとづつ進展。「2n分割可能」とか「3n分割可能」とかのゼータも出てきた。

  この分野は巨大すぎて私だけやっていても進みが遅く(悲)・・  多くの人の参加を期待します。  以上。(杉岡幹生)

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