■近似式の世界(その11)

【1】シュトレーレの近似式

  L(x)=(2x+√2(1−x))/(x+√2(1−x))

の√2に17/12を代入すると

 (17+5x)/(17−5x)

となって,シュトレーレの近似式

 (24+10x)/(24−7x)

とは異なります.

 √2に58/41を代入しても

 (58+24x)/(28−17x)

となって,シュトレーレの近似式とは異なります.

 しかし,L(x)の分子と分母を2で割って

  L(x)=(x+1/√2(1−x))/(x/2+1/√2(1−x))

ここで,1/√2を12/17で置き換えると

 (24+10x)/(24−7x)

になり,正しくシュトレーレの近似式です.

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【2】雑感

 シュトレーレは数学的な訓練を受けていなかったので,彼がどのようにしてこの近似式を発見したのかは謎のままである.おそらく職人的な直観によるものと思われるが,あまり正確ではないと誤って評価されてしまった.この誤った評価は1957年にバーバーがその誤りを発見するまで続いた.

  f(1/2)=L(1/2)=√2=1.141421

であるが,シュトレーレの近似式では

  58/41=1.41463

 バーバーはシュトレーレの近似式が正確な理由を,この式が非常に正確なのは平均律関数の分数関数近似(近似理論)と√2のディオファントス近似(数論)という2つのよい近似を効率的に組み合わせているからと結論した.

 バーバーの数学的発見のおかげでシュトレーレの名誉回復がなされた.それにしてもシュトレーレはいったいどうやって近似式を思いついたのだろうか?

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