■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その57,杉岡幹生)
最初にゼータ分割のこれまでの結果を示します。
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リーマンゼータζ(s)、導手N=1 ⇒ n分割可能である。
L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4 ⇒ n分割可能である。
LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3 ⇒ 1〜10分割可能である。n分割可能と考えられる(予想)。
LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5 ⇒ 2/4/6/8/10/12分割が可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。
LP(s) 虚2次体Q(√-7)ゼータ、導手N=7 ⇒ 3/6/9/12分割可能である。3n分割可能と考えられる(予想)。3n分割が最良か(問題)。
L2(s) 虚2次体Q(√-2)ゼータ、導手N=8 ⇒ 2/4/6/8分割可能である。
注記:nは1以上の整数
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今回は(その55)、(その56)の続きで、Q(√-2)ゼータL2(1)の10分割を調べます。
L2(1)=1 +1/3 -1/5 -1/7 +1/9 +1/11 -/13 -1/15 +1/17 +1/19 -1/21 -1/23 +・・ ------@
L2(s)はL(χ,s)の一種の虚2次体Q(√-2)のゼータ関数で、導手N=8を持つ。次のL(χ,s)のs=1の場合がL2(1)です。
L(χ,s)=χ(1)/1^s +χ(2)/2^s +χ(3)/3^s +χ(4)/4^s +χ(5)/5^s +χ(6)/6^s +・・・におけるL2(s)のディリクレ指標χ(n)は次の通り。
n≡1 or 3 mod 8のときχ(n)=1, n≡5 or 7 mod 8のときχ(n)=-1, その他のときχ(n)=0となる。
L2(1)の値は(その55)で示した通り、π√2/4 となります。
L2(1)=1 +1/3 -1/5 -1/7 +1/9 +1/11 -/13 -1/15 +1/17 +1/19 -1/21 -1/23 +・・=π√2/4 -----A
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それでは、L2(1)の10分割を示します。
■L2(1)10分割
A1= 1 -1/39 +1/41 -1/79 +1/81 -1/119 +・・ =(π/40)tan(19π/40)
A2= 1/3 -1/37 +1/43 -1/77 +1/83 -1/117 +・・ =(π/40)tan(17π/40)
A3= 1/5 -1/35 +1/45 -1/75 +1/85 -1/115 +・・ =(π/40)tan(15π/40)
A4= 1/7 -1/33 +1/47 -1/73 +1/87 -1/113 +・・ =(π/40)tan(13π/40)
A5= 1/9 -1/31 +1/49 -1/71 +1/89 -1/111 +・・ =(π/40)tan(11π/40)
A6= 1/11 -1/29 +1/51 -1/69 +1/91 -1/109 +・・ =(π/40)tan(9π/40)
A7= 1/13 -1/27 +1/53 -1/67 +1/93 -1/107 +・・ =(π/40)tan(7π/40)
A8= 1/15 -1/25 +1/55 -1/65 +1/95 -1/105 +・・ =(π/40)tan(5π/40)
A9= 1/17 -1/23 +1/57 -1/63 +1/97 -1/103 +・・ =(π/40)tan(3π/40)
A10=1/19 -1/21 +1/59 -1/61 +1/99 -1/101 +・・ =(π/40)tan(π/40)
A1 +A2 -A3 -A4 +A5 +A6 -A7 -A8 +A9 +A10=L2(1) であることを確認ください。上記10式はじつは(その21)と同じです。これら10式に対しExcelマクロで数値検証も行ないましたが、全て左辺の級数は右辺値に一致しました。
また右辺値の和”A1 +A2 -A3 -A4 +A5 +A6 -A7 -A8 +A9 +A10”は、Aのπ√2/4 に一致することも確認しました。
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上の分割級数の導出過程を簡単に述べます。次のタンジェントの部分分数展開式を使います。
1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・ =(π/(4x))tan(πx/2)
xに次の値を代入することで、分割された級数とその値が求まります。
xに19/20を代入すると、L2(1)10分割のA1が得られる。
xに17/20を代入すると、L2(1)10分割のA2が得られる。
xに15/20を代入すると、L2(1)10分割のA3が得られる。
xに13/20を代入すると、L2(1)10分割のA4が得られる。
xに11/20を代入すると、L2(1)10分割のA5が得られる。
xに 9/20を代入すると、L2(1)10分割のA6が得られる。
xに 7/20を代入すると、L2(1)10分割のA7が得られる。
xに 5/20を代入すると、L2(1)10分割のA8が得られる。
xに 3/20を代入すると、L2(1)10分割のA9が得られる。
xに 1/20を代入すると、L2(1)10分割のA10が得られる。
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L2(1)の10分割が求まりました。あるものを無視して10分割が実現されるのではなく、出てきた分身たち全部で10分割が実現されていてきれいなことです。
さて、ここでも「L2(1)とL(1)は同じ基本パーツから作られている」という事実を確認しておきましょう。
L2(1)10分割の上記10式はじつは(その21)のL(1)10分割の式と同じです。(その21)を下記<付録>で抜粋したので見てくだい。それらはL2(1)10分割の式と同じであることがわかります。
L(1)とL2(1)は、基本パーツ(A1, A2, ・・,A10)によって次のように構成されています。
L(1) =A1 -A2 +A3 -A4 +A5 -A6 +A7 -A8 +A9 -A10
L2(1)=A1 +A2 -A3 -A4 +A5 +A6 -A7 -A8 +A9 +A10
このように全く同じ部品から構成されていて、面白いことです。冒頭の表を更新しておきます。
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リーマンゼータζ(s)、導手N=1 ⇒ n分割可能である。
L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4 ⇒ n分割可能である。
LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3 ⇒ 1〜10分割可能である。n分割可能と考えられる(予想)。
LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5 ⇒ 2/4/6/8/10/12分割が可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。
LP(s) 虚2次体Q(√-7)ゼータ、導手N=7 ⇒ 3/6/9/12分割可能である。3n分割可能と考えられる(予想)。3n分割が最良か(問題)。
L2(s) 虚2次体Q(√-2)ゼータ、導手N=8 ⇒ 2/4/6/8/10分割可能である。
注記:nは1以上の整数 以上。(杉岡幹生)
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<付録>
(ゼータの香りの漂う公式の「その21」より抜粋。一部編集)
L(1)=1 -1/3 +1/5 -1/7 +1/9 -1/11 +1/13 -15 + ・・=π/4
■L(1)10分割
A1= 1 -1/39 +1/41 -1/79 +1/81 -1/119 +・・ =(π/40)tan(19π/40)
A2=1/3 -1/37 +1/43 -1/77 +1/83 -1/117 +・・=(π/40)tan(17π/40)
A3=1/5 -1/35 +1/45 -1/75 +1/85 -1/115 +・・=(π/40)tan(15π/40)
A4=1/7 -1/33 +1/47 -1/73 +1/87 -1/113 +・・ =(π/40)tan(13π/40)
A5=1/9 -1/31 +1/49 -1/71 +1/89 -1/111 +・・ =(π/40)tan(11π/40)
A6=1/11 -1/29 +1/51 -1/69 +1/91 -1/109 +・・ =(π/40)tan(9π/40)
A7=1/13 -1/27 +1/53 -1/67 +1/93 -1/107 +・・ =(π/40)tan(7π/40)
A8=1/15 -1/25 +1/55 -1/65 +1/95 -1/105 +・・ =(π/40)tan(5π/40)
A9=1/17 -1/23 +1/57 -1/63 +1/97 -1/103 +・・ =(π/40)tan(3π/40)
A10=1/19 -1/21 +1/59 -1/61 +1/99 -1/101 +・・ =(π/40)tan(π/40)
A1 -A2 +A3 -A4 +A5 -A6 +A7 -A8 +A9 -A10=L(1) であることをご確認ください。
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