■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その55,杉岡幹生)

 はじめにこれまでのゼータ分割の結果を示します。

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 リーマンゼータζ(s)、導手N=1         ⇒ n分割可能である。

  L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4     ⇒ n分割可能である。

  LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3    ⇒ 1〜10分割可能である。n分割可能と考えられる(予想)。

  LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5    ⇒ 2/4/6/8/10/12分割が可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  LP(s) 虚2次体Q(√-7)ゼータ、導手N=7     ⇒ 3/6/9/12分割可能である。3n分割可能と考えられる(予想)。3n分割が最良か(問題)。

  L2(s) 虚2次体Q(√-2)ゼータ、導手N=8     ⇒ 2/4分割可能である。

 注記:nは1以上の整数

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 今回は(その54)の続きで、Q(√-2)ゼータL2(1)の6分割、8分割を調べます。

 L2(1)=1 +1/3 -1/5 -1/7 +1/9 +1/11 -/13 -1/15 +1/17 +1/19 -1/21 -1/23 +・・   ------@

 L2(s)はL(χ,s)の一種の虚2次体Q(√-2)のゼータ関数で、導手N=8を持つ。

 L(χ,1)=χ(1)/1 +χ(2)/2 +χ(3)/3 +χ(4)/4 +χ(5)/5 +χ(6)/6 +・・・におけるディリクレ指標χ(n)は次の通り。

 n≡1 or 3 mod 8のときχ(n)=1, n≡5 or 7 mod 8のときχ(n)=-1, その他のときχ(n)=0となる。

さて、(その54)では言及し忘れましたが、@のL2(1)の値は一体いくらになるでしょうか? じつはこの値はきれいに明示的に求まり次となります。

  L2(1)=π√2/4 -----A

 これは「虚2次体の類数公式」という高度な公式を使えば求まります。他にもいろいろな導出方法があります。

 私自身のことでいえば初等的な重回積分の方法や、また10年前に開発したテイラーシステムでもL2(1)の値を出していました。

http://www5b.biglobe.ne.jp/sugi_m/page073.htm

http://www5b.biglobe.ne.jp/sugi_m/page161.htm

 @、Aをまとめて次となります。

 L2(1)=1 +1/3 -1/5 -1/7 +1/9 +1/11 -/13 -1/15 +1/17 +1/19 -1/21 -1/23 +・・=π√2/4 -----B

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 それでは、L2(1)の6分割、8分割を示します。

■L2(1)6分割

A1= 1 -1/23 +1/25 -1/47 +1/49 -1/71 +・・ =(π/24)tan(11π/24)

A2= 1/3 -1/21 +1/27 -1/45 +1/51 -1/69 +・・ =(π/24)tan(9π/24)

A3= 1/5 -1/19 +1/29 -1/43 +1/53 -1/67 +・・ =(π/24)tan(7π/24)

A4= 1/7 -1/17 +1/31 -1/41 +1/55 -1/65 +・・ =(π/24)tan(5π/24)

A5= 1/9 -1/15 +1/33 -1/39 +1/57 -1/63 +・・ =(π/24)tan(3π/24)

A6= 1/11 -1/13 +1/35 -1/37 +1/59 -1/61 +・・=(π/24)tan(π/24)

 A1 +A2 -A3 -A4 +A5 +A6=L2(1) であることを確認ください。

 上記6式は(その21)と同じです。そこで見た通り、これら6式に対しExcelマクロで数値検証も行ないましたが、全て左辺の級数は右辺値に一致しました。

 また右辺値の和”A1 +A2 -A3 -A4 +A5 +A6”は、Bのπ√2/4 に一致することを確認しました。

■L2(1)8分割

 A1= 1 -1/31 +1/33 -1/63 +1/65 -1/95 +・・ =(π/32)tan(15π/32)

 A2= 1/3 -1/29 +1/35 -1/61 +1/67 -1/93 +・・ =(π/32)tan(13π/32)

 A3= 1/5 -1/27 +1/37 -1/59 +1/69 -1/91 +・・ =(π/32)tan(11π/32)

 A4= 1/7 -1/25 +1/39 -1/57 +1/71 -1/89 +・・ =(π/32)tan(9π/32)

 A5= 1/9 -1/23 +1/41 -1/55 +1/73 -1/87 +・・ =(π/32)tan(7π/32)

 A6= 1/11 -1/21 +1/43 -1/53 +1/75 -1/85 +・・ =(π/32)tan(5π/32)

 A7= 1/13 -1/19 +1/45 -1/51 +1/77 -1/83 +・・ =(π/32)tan(3π/32)

 A8= 1/15 -1/17 +1/47 -1/49 +1/79 -1/81 +・・ =(π/32)tan(π/32)

 A1 +A2 -A3 -A4 +A5 +A6 -A7 -A8=L2(1) であることを確認ください。

 上記8式は(その14)と同じです。そこで見た通り、これら8式に対しExcelマクロで数値検証も行ないましたが、全て左辺の級数は右辺値に一致しました。

 また右辺値の和”A1 +A2 -A3 -A4 +A5 +A6 -A7 -A8”は、Bのπ√2/4 に一致することを確認しました

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 上の分割級数の導出過程を簡単に述べます。次のタンジェントの部分分数展開式を使います。

 1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・ =(π/(4x))tan(πx/2)

 xに次の値を代入することで、分割された級数とその値が求まります。

xに11/12を代入すると、L2(1)6分割のA1が得られる。

 xに9/12を代入すると、L2(1)6分割のA2が得られる。

 xに7/12を代入すると、L2(1)6分割のA3が得られる。

 xに5/12を代入すると、L2(1)6分割のA4が得られる。

 xに3/12を代入すると、L2(1)6分割のA5が得られる。

 xに1/12を代入すると、L2(1)6分割のA6が得られる。

 同様にして、L2(1)8分割でも、15/16,13/16,11/16,9/16,7/16,5/16,3/16,1/16を代入すれば、それぞれA1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8が求まります。

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 L2(1)の6分割、8分割が求まりました。

 (その54)でも見たように、ここでも「L2(1)とL(1)は同じ基本パーツから作られている」という興味深い事実を確認しておきましょう。

 ”L(1)の”6分割、8分割は(その21)、(その11)で示しましたが、下記<付録1>でそれを抜粋したので見てください。

 L(1)とL2(1)は、基本パーツ(A1, A2, ・・,An)によって次のように構成されている。

 

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 L(1) =A1 -A2 +A3 -A4 +A5 -A6

 L2(1)=A1 +A2 -A3 -A4 +A5 +A6

 L(1) =A1 -A2 +A3 -A4 +A5 -A6 +A7 -A8

 L2(1)=A1 +A2 -A3 -A4 +A5 +A6 -A7 -A8

 注記:6分割のA1〜A6と8分割のA1〜A6は同じ記号を使っていますが、値が異なることに注意ください。

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  このように両者は、全く同じ基本パーツから構成されているのです! 違いはパーツの組み合わせ方(加減の演算)の違いだけです。

 分身たち(基本パーツ)の組み合わせ方の違いだけで、違ったゼータになるというのは非常に面白い。ゼータの地下には深い構造が隠されていたといれるでしょう。

 冒頭でせっかく「虚2次体の類数公式」に触れたので、それとゼータ分割との関連をすこし下方<付録2>で探りました。この方面も今後の大きなテーマです。

 

 冒頭の表を更新しておきます。

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 リーマンゼータζ(s)、導手N=1         ⇒ n分割可能である。

  L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4     ⇒ n分割可能である。

  LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3    ⇒ 1〜10分割可能である。n分割可能と考えられる(予想)。

  LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5    ⇒ 2/4/6/8/10/12分割が可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  LP(s) 虚2次体Q(√-7)ゼータ、導手N=7     ⇒ 3/6/9/12分割可能である。3n分割可能と考えられる(予想)。3n分割が最良か(問題)。

  L2(s) 虚2次体Q(√-2)ゼータ、導手N=8     ⇒ 2/4/6/8分割可能である。

 注記:nは1以上の整数

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以上。(杉岡幹生)

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