■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その53,杉岡幹生)

 これまでのゼータ分割の結果をまず示します。

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 リーマンゼータζ(s)、導手N=1         ⇒ n分割可能。

  L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4     ⇒ n分割可能。

  LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3    ⇒ 1〜10分割可能。n分割可能と考えられる(予想)。

  LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5    ⇒ 2/4/6/8/10/12分割可能。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  LP(s) 虚2次体Q(√-7)ゼータ、導手N=7     ⇒ 3/6/9分割可能。3n分割可能と考えられる(予想)。3n分割が最良か(問題)。

 注記:nは1以上の整数

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 今回は、6分割、9分割を出した(その47)からの続きで、LP(s)の12分割を導出しましたので以下報告します。

 LP(s)=1 +1/2^s -1/3^s +1/4^s -1/5^s -1/6^s +1/8^s +1/9^s -1/10^s +1/11^s -1/12^s -1/13^s +・・

(虚2次体Q(√-7)ゼータ。ディリクレ指標χ(n)は次の通り。n≡1 or 2 or 4 mod 7のときχ(n)=1, n≡3 or 5 or 6 mod 7のときχ(n)=-1, その他のときχ(n)=0)

 s=1のLP(1)の12分割を試みます。

 LP(1)=1 +1/2 -1/3 +1/4 -1/5 -1/6 +1/8 +1/9 -1/10 +1/11 -1/12 -1/13 +・・    -------@

はじめに少し準備します。@は次のように変形できる。(これは(その46)でも記しましたが再掲します)

 LP(1)=1 +1/2 -1/3 +1/4 -1/5 -1/6 +/8 +1/9 -1/10 +1/11 -1/12 -1/13 +・・・

=1 -1/3 -1/5 +1/9 +1/11 -1/13 +1/15 -1/17 -1/19 +1/23 -1/25 -1/27 +・・・

+1/2(1 +1/2 -1/3 +1/4 -1/5 -1/6 +/8 +1/9 -1/10 +1/11 -1/12 -1/13 +・・・)

=1 -1/3 -1/5 +1/9 +1/11 -1/13 +/15 -1/17 -1/19 +1/23 +1/25 -1/27 +・・・

+1/2・LP(1)

 右辺の2項目を移項して整理すると、次となる。

1 -1/3 -1/5 +1/9 +1/11 -1/13 +/15 -1/17 -1/19 +1/23 -1/25 -1/27 +・・・=1/2LP(1)

 ここで、1 -1/3 -1/5 +1/9 +1/11 -1/13 +/15 -1/17 -1/19 +1/23 -1/25 -1/27 +・・・=Lp(1)

とおくと、

  Lp(1)=1/2LP(1)  -----A

 これより、Lp(1)はLP(1)と本質的に同じとわかります。以下でLp(1)が出てきます。

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 12分割の結果を示します。分割に関係のない級数は”⇒無視”としました。

■Lp(1)12分割

A1= 1 -1/55 +1/57 -1/111 +1/113 -1/167 + ・・ =(π/56)tan(27π/56)

A2= 1/3 -1/53 +1/59 -1/109 +1/115 -1/165 +・・ =(π/56)tan(25π/56)

A3= 1/5 -1/51 +1/61 -1/107 +1/117 -1/163 +・・ =(π/56)tan(23π/56)

A4= 1/7 -1/49 +1/63 -1/105 +1/119 -1/161 +・・ =(π/56)tan(21π/56) ⇒無視

A5= 1/9 -1/47 +1/65 -1/103 +1/121 -1/159 +・・ =(π/56)tan(19π/56)

A6= 1/11 -1/45 +1/67 -1/101 +1/123 -1/157 +・・ =(π/56)tan(17π/56)

A7= 1/13 -1/43 +1/69 -1/99 +1/125 -1/155 +・・ =(π/56)tan(15π/56)

A8= 1/15 -1/41 +1/71 -1/97 +1/127 -1/153 +・・ =(π/56)tan(13π/56)

A9= 1/17 -1/39 +1/73 -1/95 +1/129 -1/151 +・・ =(π/56)tan(11π/56)

A10=1/19 -1/37 +1/75 -1/93 +1/131 -1/149 +・・ =(π/56)tan(9π/56)

A11=1/21 -1/35 +1/77 -1/91 +1/133 -1/147 +・・ =(π/56)tan(7π/56) ⇒無視

A12=1/23 -1/33 +1/79 -1/89 +1/135 -1/145 +・・ =(π/56)tan(5π/56)

A13=1/25 -1/31 +1/81 -1/87 +1/137 -1/143 +・・ =(π/56)tan(3π/56)

A14=1/27 -1/29 +1/83 -1/85 +1/139 -1/141 +・・ =(π/56)tan(π/56)

 Aを参照して、A1 -A2 -A3 +A5 +A6 -A7 +A8 -A9 -A10 +A12 +A13 -A14=Lp(1) であることを確認ください。Excelマクロで全式を数値検証しましたが、左辺の級数は右辺値に一致しました。右辺値の”A1 -A2 -A3 +A5 +A6 -A7 +A8 -A9 -A10 +A12 +A13 -A14”もLp(1)の級数の収束値に一致しました。

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 上の分割級数の導出過程を簡単に述べます。次のタンジェントの部分分数展開式を使います。

 G[1](x)=1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・ =(π/(4x))tan(πx/2)

 このxに次のように値を代入することで、分割された級数とその値が求まります。

 G[1](x)のxに27/28を代入すると、A1が得られる。

 G[1](x)のxに25/28を代入すると、A2が得られる。

 G[1](x)のxに23/28を代入すると、A3が得られる。

 G[1](x)のxに21/28を代入すると、A4が得られる。 ⇒無視。21/28代入は3/4代入であり、L(1)2分割の一方が出る。A4は下のA11と対。(その14)参照。

 G[1](x)のxに19/28を代入すると、A5が得られる。

 G[1](x)のxに17/28を代入すると、A6が得られる。

 G[1](x)のxに15/28を代入すると、A7が得られる。

 G[1](x)のxに13/28を代入すると、A8が得られる。

 G[1](x)のxに11/28を代入すると、A9が得られる。

 G[1](x)のxに 9/28を代入すると、A10が得られる。

 G[1](x)のxに 7/28を代入すると、A11が得られる。 ⇒無視。7/28代入は1/4代入であり、L(1)2分割の一方が出る。A11は上のA4と対。(その14)参照。

 G[1](x)のxに 5/28を代入すると、A12が得られる。

 G[1](x)のxに 3/28を代入すると、A13が得られる。

 G[1](x)のxに 1/28を代入すると、A14が得られる。

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 このようにLp(1)すなわちLP(1)の分身たちが求まりました。

 見てきたようにLP(s)の分割では、3分割から始まります。それは導手NがN=7であることに関係していたのでした。1/7, 3/7, 5/7と分子に三つの奇数が出る形であるため3分割スタートとなります。したがって3分割×n=3n分割可能、すなわち、3分割、6分割、9分割、12分割・・が可能となります。そのため、9分割の次は12分割となったのです。

 LP(s)は3n分割可能と考えられますが(予想)、3n分割が最良なのでしょうか?

 今回の12分割では14個の分身候補が出てきます。その中で二つが無視され、14−2=12となり、12分割が実現されています。ゼータ分割は、このような非常にきれいな構造から成り立っています。

 さらに、分身たちを合わせた”A1 -A2 -A3 +A5 +A6 -A7 +A8 -A9 -A10 +A12 +A13 -A14”の右辺値tan()の()内の分子も、冒頭のディリクレ指標χ(n)に従っています(この場合は、全体の符号を逆にした形で従う)。これまで何度か言及しましたが、これも美しいものです。

 冒頭の表を更新しておきます。

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 リーマンゼータζ(s)、導手N=1         ⇒ n分割可能。

  L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4     ⇒ n分割可能。

  LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3    ⇒ 1〜10分割可能。n分割可能と考えられる(予想)。

  LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5    ⇒ 2/4/6/8/10/12分割が可能。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  LP(s) 虚2次体Q(√-7)ゼータ、導手N=7     ⇒ 3/6/9/12分割可能。3n分割可能と考えられる(予想)。3n分割が最良か(問題)。

 注記:nは1以上の整数

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