■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その50,杉岡幹生)
<L(1)n分割の分身たちを掛け算すると・・>
L(1)の分割級数(ゼータの分身たち)を掛け算すると、世にも美しい式が出たのでお知らせします。
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「ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その49)」のL(1)2分割、4分割、8分割を例に説明します。(その49)は(その11)の形を一部整えたものです。
その分身たちの”掛け算”をしたら、次のようになりました。
L(1)2分割⇒ A1×A2=(L(1)/2)^2 ----@
L(1)4分割⇒ A1×A2×A3×A4=(L(1)/4)^4 -----A
L(1)8分割⇒ A1×A2×A3×A4×A5×A6×A7×A8=(L(1)/8)^8 -----B
ここでL(1)=π/4です。
これを見たときは唖然としました。あまりにシンプルです!
tan()の掛け算が1になることからこれらが出るのですが、その理由はすぐにわかりました。次の通りです。4分割を例に説明します。
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■4分割
A1=1 -1/15 +1/17 -1/31 +1/33 -1/47 +1/49 -1/63 +・・ =(π/16)tan(7π/16)
A2=1/3 -1/13 +1/19 -1/29 +1/35 -1/45 +1/51 -1/61 +・・ =(π/16)tan(5π/16)
A3=1/5 -1/11 +1/21 -1/27 +1/37 -1/43 +1/53 -1/59 +・・ =(π/16)tan(3π/16)
A4=1/7 -1/9 +1/23 -1/25 +1/39 -1/41 +1/55 -1/57 +・・ =(π/16)tan(π/16)
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A1×A2×A3×A4=(π/16)^4 tan(7π/16)tan(5π/16)tan(3π/16)tan(π/16) ----C
となりますが、4つのtan()の掛け算結果は1になります。最初Excelで計算して1になったときはびっくりしましたが、じつは不思議でもなんでもない。
まずtanをすべてsin、cosに直すと、次のようになります。
tan(7π/16)tan(5π/16)tan(3π/16)tan(π/16)
=sin(7π/16)/cos(7π/16)・sin(5π/16)/cos(5π/16)・sin(3π/16)/cos(3π/16)・sin(π/16)/cos(π/16) ----D
ここで、cos(π/2−α)=sinα、sin(π/2−α)=cosαを使って、Dの真ん中より左半分のsin, cosを変形をすると(真ん中より右はそのまま)、
D=cos(π/16)/sin(π/16)・cos(3π/16)/sin(3π/16)・sin(3π/16)/cos(3π/16)・sin(π/16)/cos(π/16) =1 -----E
と、すべてが約分されて1になる。
よってC、D、Eより、Aの A1×A2×A3×A4=(L(1)/4)^4 が出ます。 @とBも、同様の計算で出ます。
キーポイントは、tan()の()の中の分子が分母の16の半分(つまり8)より小さい奇数1,3,5,7から構成されていることです。
このような形のtan(pπ/n)の掛け算は、Eのようになって1になります。
以上。
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理由はわかりましたが、ふしぎさは消えません。
驚くべきは、ゼータ関数がこのような構造を備えていることです。ゼータは究極の美から構成されているように見えます。
そして(その49)と上記@、A、Bの結果は「足してもL(1)になり、掛けてもL(1)になる」ということを示しているようにも感じます。
注記:「足しても」は、ディリクレ指標χ(n)に従った足し算(引き算)を指す。
今回の結果に関し、Sugimoto氏、KONO氏、佐藤郁郎氏には有用なコメントや資料をいただきました。感謝いたします。
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[追記]
奇数分割の3分割、5分割も見ましたが、今回の件は成り立っていました。すなわち、任意の1以上の整数nで、次が成り立ちます。
L(1)のn分割の分身たちA1,A2,・・・Anによって、
A1×A2×・・・An=(L(1)/n)^n
が成り立つ。
奇数分割では、tan()の掛け算は、偶数分割の場合とはまたちょっと違った形で(対称性の効果で)1になります。 (杉岡幹生)
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