■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その44,杉岡幹生)

<ゼータ分割に関する種々の予想 ver 2.0>

 (その23)でゼータ分割での種々の予想や問題を提示しました。しかしその後、新たに思いついたり、修正したものなどあるので、ver 2.0として改訂しておきます。

 予想群を提示しておくことは、研究のよい指針となるため有用です。新たに加えたものは※マークをつけました。消したものもあります。部分的に解けたものもあり、それらは最後の<感想、つぶやき>に書きました。

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[1]このゼータの分割は、ζ(s)を含むディリクレのL関数L(χ,s)の1次のゼータ以外の2次以上のn次ゼータでも実現されるのではないか。 2次の保型形式ゼータ(楕円曲線ゼータ)も分割できるのではなかろうか。

[2]

(1)分裂したゼータそれぞれの分身たちに対し、関数等式は存在するか。テイラーシステム(12年前開発)の観点から、存在するような気がする。

(2)テイラーシステムを使って、分割級数(分割ゼータ)の特殊値を導出せよ。

(3)また、オイラー積はどうか。mod演算で特徴づけられた素数でそれぞれの分身たちのオイラー積が作れるか?

(4)分割ゼータ(分割級数)でリーマン予想は成り立つか?

[3]ゼータ分割は、群論とどこか関係しているような気がする。分割の操作は、群の4つの定義を満たしているか? 部分群。nのmodで。

[4]

(1)ζ(s)では奇数ゼータζ(3)、ζ(5)、・・でも分割できるのではないか。別の生成核関数が必要なはず。 L(s)では、偶数のL(2)、L(4)、・・・ではどうか。

(2)ζ(s)、L(s)以外の無数にあるL(χ,s)の(虚or実の)2次体ゼータでも分割可能なはず。

[5]岩澤理論、クンマーの定理、イデアル類群との関連をさぐれ。

[6](その18)〜(その20)で提示した予想は解けないか? この予想、「分子係数和=分母係数予想」と名付けます。

「分子係数和=分母係数予想」

『ζ(2n)、L(2n-1)を分割した結果に関し、分子のsin式におけるsin項の係数の和(定数項も含める)と、分母cosにかかる係数は一致するだろう。 ここで、nは1以上の整数。』

 例えば、Z(10)2分割の分身A1では、次のように成り立つ。(A2でも成立⇒(その20))

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 Z(10)のA1の値は次の通り。

 A1=α^10 {62+1072(sβ)^2+1452(sβ)^4+247(sβ)^6+2(sβ)^8}/{2835(cβ)^10}

 分子のsin係数の和=62+1072+1452+247+2=2835、 分母のcos係数=2835

 よって、予想は成り立っている。

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※[7](その25)、(その26)で提示した「奇数出現位置予想」は解けないか? 

「奇数出現位置予想」

『分割されたζ(m)、L(m)の特殊値の分子において、奇数は一度だけ出現する。さらに次の関係を満たすサイン位置pに奇数が出現する。奇数が掛かるサインsinの指数の値をpとすると、 m+p=2^n

 ただし、分母と分子は最大限約分されているとする。ここでmは、ζ(m)では2以上の偶数、L(m)では1以上の奇数。nは1以上の整数。』

 例えば、Z(10)2分割の一つA1では、次のように成り立っている。(A2でも成立⇒(その20))

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 A1= α^10 {62+1072(sβ)^2+1452(sβ)^4+247(sβ)^6+2(sβ)^8}/{2835(cβ)^10}

 Z(10)を見ているので、m=10である。分子には247という奇数が一度だけ出現している。247が掛かるサインsβは(sβ)^6であるからp=6である。

  10 + 6=2^4

 よって、予想は成り立っている。

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※[8]ゼータの分割は、一意に実現されることを証明せよ。

  例えば、あるゼータを12分割したとき、「二通りの真の12分割が実現される」などとというようなことが無いことを示せ。

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<感想、つぶやき>

[1]これは巨大テーマである。2次以上のゼータは、現代数学でもわからないことだらけ。一般のn次ゼータの分割など夢のまた夢。

[2]

(1)テイラーシステムでちょっと計算したところ、分割ゼータ(分割級数)の関数等式は”存在する”ような気がする。

   注記:テイラーシステムは2006年に発見したもの。これを使うと、ζ(s)やL(s)の”任意の実数点”の特殊値が簡単に導手できる。

(2)分割ゼータの関数等式がわかれば、できるんだろうが、むずかしい。いったん休止。

(3)解決。分割ゼータのオイラー積は存在しないとわかった。

(4)解決。分割ゼータでは、リーマン予想は成立しない。数値計算でわかった。

[3]これはいつか見えてくるはず。

[4]

(1)2か月前にやったが、失敗した。どこかで計算ミスしたはず。再トライ中。

(2)部分的に解決。ζ(s)、L(s)以外のL(χ,s)でも分割が可能なことはLN(s)実2次体Q(√5)、LA(s)虚2次体Q(√-3)のゼータで見た。まだまだ無数に2次体ゼータはあり・・

[5]岩澤理論とも地下水脈でつながっている気がする。

[6]と[7]は、どっちが難しいだろうか? 独断と偏見で、[6]の方が難しい。[7]は1カ月集中的にやれば解けそうな気がする。ゼータ分割の世界は魅惑的な構造がたくさんあって[7]ばかりやる気がしない。数学仲間に問うと[6]は「解けそうだ」という意見が多かった。私とは逆で面白い。

[8]一意に決まっているのだが、証明となると・・・?  以上。(杉岡幹生)

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