■学会にて(京大数理解析研,その14)

 正三角形でなく二等辺三角形(頂角t)からできている面数4nの双子の多面体の安定性について,

(1)n=5,t=59°→一方の重五角錘を完全に押しつぶすことができる

(2)n=3,t=107°36′→3種類の安定した形状をとる

(3)n=3,t>103°+α→3種類の安定した形状をとる

という結果が得られている.これらのことについて検証してみることにする.

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【1】重n角錐の高さ

 まず,二等辺三角形(頂角t)の底辺の長さをb,等辺の長さを1とすると,

  b=2sin(t/2)

 次に,重n角錐の高さhを求めてみることにする.

  b/(4−b^2−h^2)^(1/2)=tan(π/n)

より

  h^2=−b^2+(4−b^2)tan^2(π/n)

となる.

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【2】重n角錐の開口関数

 重n角錐に1本の切れ込みを入れると,口の開いた重四角錐が得られる.一方の開口重四角錐の高さhから開口の大きさwを求めると,

  w=f(h)=(4−h^2)^1/2sin(4arctanb(4−b^2−h^2)^-1/2)

 これは他方の開口重四角錐の高さとなるから,

  h=g(w)=(4−w^2)^1/2sin(4arctanb(4−b^2−w^2)^-1/2)

 ここで,2つの開口重n角錐が歪みなしに接合できるための条件は

  h=g(f(h))

  h:0〜(−b^2+(4−b^2)tan^2(π/n))^1/2

である.

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【3】プログラムによる検証

  w=f(h)=(4−h^2)^1/2sin(4arctanb(4−b^2−h^2)^-1/2)

とおいて,y=x,y=g(f(x))の交点を求めてみよう.グラフを描いてみるまでもなく,以下のような簡単なプログラムで,n=3,t:約103.5°〜107.5°のとき,交点が3箇所あることがわかる.

1000 PI=3.14159

1010 N=3

1020 T=105:T=T/180*PI:B=2*SIN(T/2):PRINT B

1030 '[b2t]:T=2*ATN(B/SQR(4-B*B)):T=T*180/PI:PRINT T

1040 MADE=SQR(4-B*B-B*B/TAN(PI/N)/TAN(PI/N))

1050 FOR X=0 TO MADE STEP .05

1060 Y=SQR(4-X*X)*SIN(N*ATN(B/SQR(4-B*B-X*X)))

1070 IF (4-B*B-Y*Y)<=0 THEN 1100

1080 Z=SQR(4-Y*Y)*SIN(N*ATN(B/SQR(4-B*B-Y*Y)))

1090 PRINT X,Z,X-Z

1100 NEXT X

1110 END

 n=3,t=105°のとき,x=0.1013,x=0.4996,x=0.7551,すなわち,頂角が105°の12個の二等辺三角形からできている双子の12面体は3つの安定した形状をとるのである.

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